2015 Fiscal Year Research-status Report
シグマボンドメタセシスを基軸とする触媒的フッソ化反応の開発
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26410045
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
国安 均 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00252594)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ヒドロフッ素化 / カルボフッ素化 / アルキン / エポキシド |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで、遷移金属触媒を用い、炭素と周期表第16族の硫黄、セレン、酸素とをアルキンやアレン類などの炭素-炭素不飽和結合にone-spotで導入する反応について精力的に研究してきた。また、最近では、金属-ハロゲン元素と炭素-ハロゲン元素との間で、ハロゲン交換反応が効率よく生起し、このことを利用して、反応のドライビングフォースが極めて簡単な実験操作で明らかとできること、また、その過程をDFT計算を用いた理論計算で明らかとした。さらに、このハロゲン交換反応は、従来型の金属塩を用いるハロゲン交換反応とは異なり、極めて効率よく、簡便に金属-ハロゲン結合をより重い金属-ハロゲン結合に変換する合成化学的に非常に価値の高い反応であることを明らかにした。 本研究では、以上2つの成果を融合させた、学問領域の開発に取り組んだところ、ヘテロ元素として、フッ素を用いる反応において、興味ある実験結果を得た。 Cu-O結合とC-F結合の間で温和な条件下、Cu-F結合が生成することを見出した。31PNMRから、2つのCu、2つのF、配位子のBINAPからなる4面体錯体が生成していることが明らかとなった。また、この錯体が鍵活性種となっているものと考えられる、アルキン類のヒドロフッ素化が進行することを見出した。反応機構に関して、生成物の立体化学の変化について調べたところ、HとF元素は基質に対して、速度論的に導入されていることが示唆される点興味深い。また、添加剤として使用するBINAPのキラリティイと触媒活性との相関について調べたところ、ラセミ体が光学活性体よりも高い反応性を示した。 また、反応基質として、アルキン類の代わりにエポキシド類を用いると、炭素官能基とフッ素直接基質に付加することを見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究データは、ヒドロフッソ化については、卒業した修士課程の学生のデータがかなりまとまっており、学術論文にできるのに近い状況にある。エポキシドを用いる反応は、配位子の条件検索を広く行ったところ、かなり高い効率で反応が進行する系をみつけている。しかし、原料のエポキシドの安定性が低く、F源として用いるベンゾイルフルオリドに対して過剰用いる必要があるなど、反応の選択性について克服すべき点が残されている。また、アルキンのヒドロフッソ化およびエポキシドのカーボフッ素化いずれの反応系でも、化学量論の錯体を用いた反応機構解明に関する研究が手つかずであり、今後さらに反応のチューニングをとる必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
アルキンのヒドロフッソ化については学術論文への投稿の準備を早急に進める。また、本研究を評価する上で重要となる、Cu-F結合を有する錯体を単離してX線で構造を決定すること、またCu-Fのアルキンに対するトランス付加とシス付加について、理論計算を行い、実験と理論両面から詳細を解明していく予定である。 エポキシドのカーボフッ素化についても、錯体化学的観点から研究していく予定である。また、この反応はベンゾイルフルオリドをF源と用いるほかの反応とはことなり、ベンゾイル基を反応基質に取り込めるという大きな利点がある。このことを利用して、他の不飽和基質を用いた反応に応用する予定である。 予備的な研究では、エポキシドの代わりにアジドを用いる反応でも、炭素官能基とフッ素原子の位置選択的な導入反応が可能となることが明らかとなっており、反応条件の最適化を行う予定である。また、硫黄を含む環状化合物や、他の員数を有する化合にも反応を適用する予定である。
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Causes of Carryover |
研究に必要な、銅やパラジウムなどの遷移金属錯体やアルキン類やエポキシド類を計画的に購入し使用してきた。また、化学反応の解析に必要なNMR〈核磁気共鳴装置)で使用する、重溶媒についても同様に使用している。しかし、どの化学薬品が必要になるかは、研究結果に応じて考える必要があり、若干、経費見込みと実際の使用量との間に違いが生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後も必要となる、種々の化学薬品の使用に主に充てる予定である。
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Research Products
(29 results)