2015 Fiscal Year Research-status Report
共役付加を鍵とするアルケン環化によるヘテロ環および炭素環の選択的合成
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26410048
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Research Institution | Nara University of Education |
Principal Investigator |
山崎 祥子 奈良教育大学, 教育学部, 教授 (50182481)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 共役付加 / エテントリカルボン酸 / シンナミルアミン / ピロリジン / 分子内[2+2]環化付加 / シクロブタン / 分子内[4+2]環化付加 / δ-ラクトン |
Outline of Annual Research Achievements |
効率的及び選択的結合形成反応の探索は、有機合成化学において、重要な課題である。資源の有効利用などの観点から、有用物質を効率的かつ選択的に合成する新規反応の開発が望まれる。生物活性を示す物質や機能性物質に含まれる基本骨格ヘテロ環の新規効率的合成反応の開拓研究を行なった。これまでの研究で共役付加における高い反応性および有用性が明らかになってきたエテントリカルボン修飾誘導体のアルケン部分の反応の新規な活用法の展開を研究した。 エテントリカルボン酸ジエステルとシンナミルアミンとのアミド縮合反応条件で、連続的な種々のピロリジン環化反応が起こった。芳香族上の無置換, p-F, Cl, Br, OMe置換シンナミルアミンでは、THF中、共役付加を鍵段階とする分子内[2+2]環化付加により、シクロブタン縮環ピロリジンが得られた。溶媒を1,2-ジクロロエタンを用いたとき80 °Cでδ-ラクトン縮環ピロリジンが生成した。さらに、 p-NMe2置換シンナミルアミンでは、HOBt付加ピロリジンが得られた。また、m-NO2置換シンナミルアミンでは、HOBt付加ピロリジンが立体選択的に得られた。一方、o,p-NO2, p-CO2Me, CO2Et, CN, CF3置換シンナミルアミンでは、分子内[4+2]環化付加(Diels-Alder)/H+移動により、三環性化合物が得られる新規な効率的反応が見つかった。これらの反応形式の違いの要因を考察している。スチリル基のヘテロ芳香族であるフラン類似体についても検討したところ、立体化学の異なる分子内[4+2]環化付加が起こった。フラン類似体では[4+2]環化付加が共役付加を経て段階的に起こった可能性がある。反応機構の詳細について現在検討中である。 以上の環化生成物は生物活性を示す化合物や新機能性物質に変換できる可能性があり、有用な反応が開発できたと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
共役付加を鍵とするエテントリカルボン酸とシンナミルアミンとの反応で、連続的な種々のピロリジン環化反応が起こった。生物活性を示す化合物や新機能性物質に重要な骨格である含窒素ヘテロ5員環および多環性化合物を合成することができた。計画に従い、さらに新規な共役付加を鍵とする選択的アルケン環化について試みている。また化学選択性を制御する因子について解明し、有機合成の新手法として発展させることを行っているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
研究はほぼ当初の予定通り進行している。さらに研究を発展させるため、新規効率的なアルケン環化反応による合成実験を行う。 環化反応におけるシンナミルアミンのベンゼン環上の置換基に依存する化学選択性を検討する。また、ビニル含ヘテロ芳香族(フラン、ピリジンなど)を含む基質の、Diels-Alder反応などについて検討する。立体選択性についても吟味する。キラルアミンを原料としたジアステレオ選択的反応に展開する。 これまでの成果を学術論文誌、学会等において発表しつつ問題点を整理し、研究の発展を行う。
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Causes of Carryover |
一部の薬品で年度内での注文後納期が遅く、当該年度納品が間に合わなかったが、研究はほぼ当初の予定通り進行している。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
さらに研究を発展させるため、平成28年度の繰り越し金は、28年度の試薬、ガラス器具などの消耗品の一部に充てる計画である。次年度の研究計画は当初の予定通り遂行する。試薬、ガラス器具などの消耗品および実験補助謝金を使用する。また、成果発表のための、旅費、学会参加費にも使用する計画である。
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