2014 Fiscal Year Research-status Report
シクロ[n]ピロール類を用いた近赤外吸収色素の創出と機能開発
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26410052
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
奥島 鉄雄 愛媛大学, 理工学研究科, 准教授 (60359924)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 芳香族化合物 / π電子系 / ポルフィリン |
Outline of Annual Research Achievements |
meso位といわれる架橋炭素の数が少ない誘導体は比較的合成例が少なく、部分的にビピロール骨格を含む誘導体が散発的に報告されている。meso位を全く含まないシクロ[n]ピロール類は報告例がほとんどない。2002年にJ. L. Sessler らによってシクロ[8]ピロールが初めて合成され、n = 6および7の誘導体合成が報告されたのみである。彼らはさまざまなグループとの共同研究により、ジプロトン化ジカチオンの強いアニオン配位能や、液晶分子、半導体特性など興味深い物性を報告しているが、誘導体合成はその合成的困難さから積極的には取り組まれていない。π拡張や核置換などのさまざまな誘導体を合成することで、新しい物性や卓越した機能を見いだされることが十分に考えられる。 前駆体法やπ拡張ピロール合成により、多環式芳香環縮環ビピロールを合成し、酸化的カップリングにより環化させ、π拡張シクロ[n]ピロールとして、ベンゾ体のほか、アセナフチレン縮環、トリプチセン型、アリール置換体を合成した。また、中心アニオンの交換反応により、オキソカーボン酸を中心に配位させることができた。また、アセナフト体においてはオキソカーボン酸をテンプレートとすることで選択的にシクロ[10]ピロールを合成し、単離し、X線結晶構造解析により構造を明らかした。得られた分子は2000 nm付近に大きな吸収を示した。また、環拡張・縮小シクロ[n]ピロール(n = 10, 6)の合成に成功した。分子の骨格と共役拡張、吸収波長の関係を、吸収スペクトルやX線結晶構造解析、MCDスペクトルの測定およびTD-DFT計算を用いて芳香族性や電子構造の考察から明らかにした。これらの成果について3件の学会発表を行った
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
π拡張シクロ[n]ピロール類については当初の予定通り合成を進めることができた。また、このときこれまでは副生成物としてごく少量しか得られなかったシクロ[10]ピロールを選択的に合成することに成功した。核置換誘導体やβ連結型誘導体の合成については原料の合成は終了しており、反応条件の検討を進めている。アニオン交換体の合成と構造決定も達成している。
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Strategy for Future Research Activity |
1.β連結型誘導体の合成:β連結ビピロールの合成には成功しており、今後は反応条件の検討を進める。 2.アニオン交換体の合成:いくつかの誘導体合成には成功しており、論文にまとめるほか、超分子化へ向けた展開や単分子測定への応用をおこなう。 3.オクタフィリン以外の環拡張体の合成:適切な中心テンプレートを用いることで選択的な10量体の合成には成功している。今後はチエノおよびピロロビピロールを合成し、n = 10以上のシクロ[n]ピロールの合成に挑戦する。
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Research Products
(4 results)