2014 Fiscal Year Research-status Report
ヘテロ原子の配位特性を利用した抗癌性糖連結キノリノール白金・パラジウム錯体の合成
Project/Area Number |
26410056
|
Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
野元 昭宏 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (60405347)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片岡 洋望 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40381785)
矢野 重信 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 教授 (60011186)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 抗がん剤 / ヘテロ原子 / 糖連結錯体 / シスプラチン / がん耐性 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画に従い、糖鎖部位については、まず確立したグルコサミンを用いた合成法に従って合成した。入手可能なグルコサミン、マンノサミン、ガラクトサミンについて、実験を行ったところ、いずれも反応は進行し対応する白金およびパラジウム錯体を得ることに成功した。アミノ糖にガラクトサミンを用いた場合は、反応系に生じた沈殿を回収すると、目的のパラジウムおよび白金錯体が中程度の収率で得られた。アミノ糖にマンノサミンを用いた場合は、反応系に沈殿は生じなかった。反応混合物の溶媒を減圧留去し1H NMRを測定すると、イミンのピークが消失しており、目的物は確認できなかった。得られたパラジウム錯体、白金錯体の1H NMRのアノマー位のプロトンを帰属し、カップリング定数を調べると6.8 Hzであった。一般的に、アルファ体のカップリング定数は約3 Hz、ベータ体のカップリング定数は7-8 Hzであることが知られている。よって、パラジウム-ガラクトサミンはベータ体であると推測される。白金-ガラクトサミンでは6.8 Hzであるので、ベータ体であると推測される。奈良先端大矢野研究グループでは、X線結晶構造解析、およびESIマス測定により構造確認を行った。そこで、名古屋市大片岡研究グループにて、抗がん作用を調べたところ、効果はシスプラチンにはおよばないものの、いずれの薬剤においても抗がん作用が見られた。現在、いくつかの耐性細胞株種について引き続き抗がん作用の検討を行っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画通り、誘導体錯体であるパラジウム-ガラクトサミン、白金-ガラクトサミン錯体の合成に成功し、抗がん作用の発現を確認した。さらに本年度最終段階になって、片岡研究グループでは、白金-グルコサミン錯体が胃がん耐性株に対し高い抗腫瘍活性を示すことを見出した。シスプラチンの大きな問題点の一つに、すぐに耐性ができてしまうことが挙げられるが、今回の結果はこの問題に対する大きな改善展開と考えられ、医工連携に基づく、迅速な合成、構造決定と薬剤効果の検証が密接に連携した結果と考えている。さらに、質量分析による構造決定が容易であることも示唆され、生物試験への速やかな薬剤サンプルの提供と、迅速な合成研究へのデータフィードバックの一連のプロセスが予想以上に早い段階で確立された。以上のことから予想以上の研究推進と考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究計画に従い、抗がん作用の化学的解明に取り組む。現在、工学系視点からその解明にあたるべく、錯体配位子の変換を行い、質量分析による構造同定を行っている。同時に生物系評価では、新たに明らかとなりつつある耐性がん株種に対する抗がん作用について詳細な検討を行う予定である。また、矢野研究グループでは本研究成果の社会還元についても取り組みを開始しており、企業共同研究についても検討予定である。
|
Causes of Carryover |
本年度、想定以上に研究が推進し、ナノテクノロジープラットフォームにおける最先端機器を利用することで、錯体の構造決定が迅速に微量分析が可能であることが判明し、必要と思われていた消耗品の使用を抑えることができた。また一般に多くのスクリーニングが必要な生物試験においても早々に抗がん作用が確認されたことから消耗品費を抑えることができた。これに伴い、さらなる錯体の誘導体合成と、耐性株種の準備が本研究テーマを飛躍的に高度化することが可能と考え、次年度にこれらを購入、使用する予定である。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度の終わりにおいて、本研究での合成錯体が胃癌耐性株種に対して、高い薬剤効果を示すことが示唆され、次年度に計画していた抗癌活性の作用解明に合わせ、新たに耐性株種に対する作用機序の解明も同時に行うため、これらに必要な消耗品に使用の予定である。
|
Research Products
(18 results)