2015 Fiscal Year Research-status Report
ヘテロ原子の配位特性を利用した抗癌性糖連結キノリノール白金・パラジウム錯体の合成
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26410056
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
野元 昭宏 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (60405347)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片岡 洋望 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40381785)
矢野 重信 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 教授 (60011186)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 有機元素化学 / 抗がん剤 / 錯体化学 / 有機合成化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画に従い、薬剤作用機構の解明に取り組んだ。その結果、DNA塩基部位が金属中心に配位することで抗がん活性を示すことが明らかとなった。 前年度までに本薬剤が耐性癌に対して効果があることが見出された。シスプラチンで明らかになっているように、錯体がDNA塩基に配位結合し、増殖を抑えていることが考えられる。耐性がん細胞に効果がある理由として、当研究グループでは本薬剤が有する糖鎖のため、薬剤が異物と認識されにくい構造になっていると考えている。細胞内への取り込み後はDNAまで到達した薬剤のみが配位し、増殖を抑制可能となる。従って、イミン配位子の形を変え、固定化の束縛を緩めれば、薬剤の効果が下がると予想した。そこで合成可能なチアゾール環に着目した。チアゾール環は白金への配位がイミンより弱いことが知られており、小さな5員環であることから配位環境のみを変化させることが可能である。府立大学グループで配位力が弱いチアゾール系錯体を合成し、奈良先端大グループで結晶化、構造決定後、名古屋市立大グループでの評価を行ったところ抗がん活性は弱まった。従って当研究グループで予想した薬剤の取り込みと作用機構がほぼ明らかになったと考えている。また、ごく最近、配位子にヨウ素を用いた結果、さらに抗癌活性が高いことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画について、研究は想定通り進展しており、本年度の主要目的である薬剤作用機構の解明は大きく進展した。重要な点は、これらが場当たり的な成果ではなく、合成部隊の大阪府立大グループ、構造決定部隊の奈良先端大グループ、生物評価系の名古屋市立大グループが密接に連携をとることによって得られた裏付け、理由付けのあるデータ群であることである。そのため、ごく最近になって、さらに研究を展開し、配位子の交換を行った。一般にシスプラチン系の錯体では塩素アニオンを配位子としているが、これをヨウ素に代えることで抗がん性にどのような効果があるか調べたところ、シスプラチンに匹敵する抗がん活性を有する薬剤に辿り着いた。 以上のことから、研究は当初の計画以上に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に従い、最終年度ではさらに微視的にDNAとの相互作用について明らかにする。これによって医工連携に基づく分子レベルでの解明から実用薬剤の開発が達成される。現在、研究は大きく進展しており、医学的作用機序に加え、化学的原因についても明らかにする大きなチャンスが来ている。これらを統合的に明らかにすることが可能な薬剤開発は限定的であり、総合的な薬剤開発につなげる。 具体的には、大阪府立大グループでは、これまでに明らかになった作用機構に従い、水中でアクア錯体を調製後、グアニン誘導体を導入し、錯形成をUV吸収追跡する。特に興味があるのはグアニン、チミン、アデニン、シトシンについて錯形成定数を導き、DNAへの配位部位について選択性を算出する。奈良先端大グループではまだ明らかとなっていない臭素錯体、酢酸錯体について構造決定を行う。名古屋市立大グループではヨウ素体のマウス実験に入る。これらを総合的に薬剤開発に集約する。
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Causes of Carryover |
本年度、大きく研究が進展し、テスト合成や結晶化、スクリーニング細胞株への支出を大きく減らすことができた。その分、次年度に新規配位子、新細胞株、マウス購入などの必要が予想され、そちらに支出することが研究進展に有益と考えられたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
年度終了時に高い活性を有する新ヨウ素薬剤の開発に至った。これを用いたがん細胞株種に対するスクリーニング、マウス実験に用いる予定である。
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Research Products
(28 results)