2015 Fiscal Year Research-status Report
特異な環状構造をもつパイ共役系アントラセン化合物の創製
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26410060
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
豊田 真司 東京工業大学, 理工学研究科(理学系), 教授 (80207646)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | パイ共役系 / アントラセン / 環状構造 / アセチレン / クロスカップリング / 理論計算 / ひずみエネルギー |
Outline of Annual Research Achievements |
特異な環状構造をもつパイ共役系化合物として,アセチレンまたはビニレンリンカーで連結した3系列の化合物を標的として研究を行った.下記の他に関連のテトラセン骨格を用いたキラル誘導体の合成とエナンチオマー分割にも成功した. 剛直な環構造をもつ構造では,前年度に合成した内側にエチル基を有する誘導体の構造や性質を調べ,エチル基の動きが高度に束縛されていることを明らかにした.フェニル基およびイソプロピル基をもつ誘導体の合成も継続的に行ったが,収率が非常に低く不安定であるため,詳しい性質を調べることは困難であった.これらの構造のひずみエネルギーを定量的に評価するために,モデル反応を用いた理論計算を行った.置換基の種類とひずみエネルギーの関連性から,対象となった剛直環構造の構造的特徴を議論した. 二重結合リンカーで連結したビニレン化合物では,昨年度に合成したトランス連結型の環状二量体に引き続いて,シス連結型の合成に取り組んだ.アセチレン誘導体を立体選択的に部分水素化するアプローチで合成することができた.トランスとシス誘導体の分子構造や性質を比較し,各リンカーの特徴を評価した.環状2量体の合成法を参考にして,環状3量体を合成するための基本反応の条件検討も行った. 対面型大環状化合物では,二つのアントラセン環が対面した環状誘導体の合成を引き続き行った.ユニットをクロスカップリングにより連結し,環化反応を様々な条件で行った.収率は非常に低いものの,目的の環状化合物が得られた.置換基を導入しても溶解性は低いままであり,アントラセンの対面配置と物性の関連性を考察した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3系列の標的構造のうち,「剛直環構造」をもつ化合物ではエチル基をもつ誘導体の研究成果をとりまとめ論文として発表することができた.「ビニレン化合物」では二重結合リンカーの立体化学を制御した誘導体の合成に成功し,成果を取りまとめるためのデータがほぼ整った.以上のことより,本研究課題の研究期間3年のうち2年目までの進捗状況はおおむね順調である.
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Strategy for Future Research Activity |
「剛直環構造」をもつ化合物では,理論計算を用いて分子構造とひずみエネルギーの相関を精密化していく.「ビニレン化合物」ではこれまで合成した化合物の成果をとりまとめ,さらに大きな環状誘導体の合成研究を進めていく.「対面型化合物」では,当初の目的構造は合成が非常に困難であるので,対面した芳香環部をアントラセンからナフタレンなどに変更した環状構造の構築を検討していく.
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Causes of Carryover |
研究代表者が平成27年4月に異動し,異動先において研究室の整備状況を考慮して本研究課題を円滑に継続するために,次年度使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は,おもに本研究課題を実施するために必要な物品費として、翌年分と合わせて薬品類,ガラス器具の購入を計画している.
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