2015 Fiscal Year Research-status Report
発光性配位高分子ナノ結晶の励起エネルギーダイナミクスの研究
Project/Area Number |
26410063
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小林 厚志 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (50437753)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 配位高分子 / 光反応 / 金属錯体 / 水分解反応 / 電荷分離 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、これまで申請者が見出してきたPt(II),Ru(II)錯体配位子から成る発光性多孔質配位高分子を基盤として、1)配位モジュレーション法を用いたメゾスコピック領域へのダウンサイジング、2)光アンテナ系の構築と電子正孔対の空間分割を目指した機能性分子の表面固定化、の2つの合成化学的アプローチを駆使して、メゾスコピック領域における光励起エネルギーダイナミクスの解明と制御法の開発を目的に研究を展開中である。 研究次年度となる平成27年度は、電子正孔対の空間分割を主目的に据えて、酸化チタンナノ粒子表面に対するRu(II)錯体配位子の固定化に焦点を当てて検討した。過去の研究からRu(II)ビピリジン錯体は、酸化チタン表面への固定化により、3MLCT励起状態において、迅速な電子注入が可能な光増感剤であることが知られており、色素増感太陽電池などへの応用が期待されていたが、4電子移動過程である水の酸化反応(酸素発生反応)への有効性は実証されていなかった。本研究で、固定用官能基としてホスホン酸を修飾したRuCP2錯体配位子を酸化チタンナノ粒子へ固定化し、ナノ粒子型光増感剤として活用したところ、CoOxナノ粒子を酸化触媒とした場合では、RuCP2錯体では光酸素発生反応が駆動しなかったのに対して、ナノ粒子型光増感剤では光触媒的酸素発生の駆動が明瞭に確認された。一般的にナノ粒子への固定化では、固定化された分子の拡散速度が低下するため、光触媒活性は減少すると考えられるが、本研究で得られた結果はこれとは正反対であり、酸化チタンナノ粒子への電子注入により生成するRu(III)種の長寿命化が、光酸素発生反応を効率よく進行させたと考えられる。今後さらなる詳細な検討を行い、高効率に電荷分離を誘起可能なナノ粒子型光増感剤の開発を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の3カ年計画の次年度において、最も困難な課題として想定していた「水の酸化反応を駆動できるナノ粒子型光増感剤の開発」に一定の目処が立てられたことを考慮すると、当初の計画以上に進展していると判断して差し支え無いであろう。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は研究最終年度であることから、より高効率に光電荷分離を誘起可能なナノ構造の構築を主目的として研究を展開する。具体的には、1)酸化チタンナノ粒子表面における多分子層膜の形成、2)Agナノ粒子の埋め込み、など励起電子をナノ粒子内部へ迅速に移動させつつ光吸収効率の向上を目指して、異分子融合型ナノ集積体の構築を行う。
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Causes of Carryover |
新年度以降へ向けた予備予算の確保と、現在設計中の測定システム立ち上げ予算の確保を目的に、当該年度経費の約15%程度を研究最終年度へ繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度経費を含めて、研究に必須な合成試薬等の消耗品とともに、測定システム立ち上げに必要な機材調達へ活用していく予定である。
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Research Products
(17 results)