2014 Fiscal Year Research-status Report
プロトン―電子連動混合原子価状態の安定性に及ぼす電子状態および立体構造の影響
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26410068
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
海老原 昌弘 岐阜大学, 工学部, 教授 (80201961)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 水素結合 / 混合原子価状態 / 金属原子間結合 / プロトンー電子連動 / ロジウム |
Outline of Annual Research Achievements |
カルボン酸架橋ロジウム複核錯体[Rh2(O2CPr)4]と2,3-ジヒドロキシキノキサリン(H2dhq)との反応により,二重水素結合二量体を形成する錯体の合成を行っており,1つのカルボン酸イオンが置換された[Rh2(O2CPr)3(Hdhq)]が生成していることをNMRにより確認しているが,単離には至っていない. ビイミダゾレートを配位子とするハーフランタン型ロジウム複核錯体の関連化合物として,ベンゾビイミダゾレートを配位子とするハーフランタン型錯体の合成を行った.ビスベンゾイミダゾール(H2bbim)は文献の方法により合成したが,一般的な溶媒に対する溶解度が著しく悪く,この配位子とロジウム錯体との直接の反応による合成はできなかった.このため,ルチジンによりジベンゾビイミダゾールのプロトンを脱離させビスベンゾイミダゾレートとし溶解度を改善させ,ロジウム錯体との反応を行ったところ,これにより反応が進行し,目的の錯体が得られた.エーテル中から結晶化させた錯体の単結晶X線構造解析により、その構造を明らかにし,ビイミダゾレート錯体と同様なハーフランタン型錯体二量体[Rh2(O2CPr)2(Hbbim)2(PPh3)2]2であることを明らかにした.また,この錯体が段階的に酸化されることが分かり,混合原子価状態を持つことがわかった.しかし,この錯体の溶解度が良すぎるため,現在のところ十分な精製が行えていない. ビイミダゾレート錯体[Rh2(O2CBu)2(Hbim)2(PPh3)2]2について,安定な混合原子価状態について量子化学計算を行った.計算は,水素結合プロトン位置の異なる3つのモデル[Rh2(O2CBu)2(Hbim)2(PPh3)2]2+,[Rh2(O2CBu)2(Hbim)(bim)(PPh3)2][Rh2(O2CBu)2(H2bim)(Hbim)(PPh3)2]+,および[Rh2(O2CBu)2(bim)2(PPh3)2][Rh2(O2CBu)2(H2bim)2(PPh3)2]+について行った.その結果,一方の錯体にプロトンが集まった3番目のモデルのみが安定な構造を与えることが明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
26年度の研究計画では,カルボキシレート架橋錯体の配位子一つを水素結合により二量化可能な配位子に置換することを目的としていた.現在,単離には至っていないが,NMRにより合成は確認できている. 二つの水素結合点をもつキレート配位子を2つもつハーフランタン型複核錯体として,ビスベンズイミダゾレートを配位子とする錯体が合成でき,構造も確認できた.種々の溶媒への溶解度が高すぎるため十分な精製は行えていないが,これは合成時に使用する試薬の変更により十分に克服可能と考えられる. 理論計算についても,混合原子価状態の安定性を3種のモデル計算から最も安定な構造を予測することができたので,これを基に新たな構造の錯体を設計することができる.
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Strategy for Future Research Activity |
目的とする錯体の内,2つは現在までに合成されているので,当初の計画のようにロジウムを中心金属とする錯体の合成を進めていく. 今年度は,架橋配位子にアミデートやアミジネートを導入した錯体の合成を行い,電子状態が混合原子価状態の安定性に与える影響を評価すると共に,混合原子価錯体の単離を行う予定である.また,ルテニウム錯体の合成も行う予定である.
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Causes of Carryover |
26年度には,ロジウム錯体の合成のため貴金属試薬の購入等に大きな金額を見込んでいたが,溶解度の問題等で合成が予定よりは遅れ気味になったため使用しない金額が多くなった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
27年度は,錯体の合成に目処が立ち,分離・精製を本格的に行うことになるため器具と試薬の購入に使用する予定である.
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Research Products
(4 results)