2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26410082
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
島 隆則 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 専任研究員 (60391976)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 窒素活性化 / 含窒素有機化合物 / チタン錯体 / ヒドリド錯体 / ニトリド錯体 |
Outline of Annual Research Achievements |
窒素は大気中に豊富に存在し容易に利用可能な環境資源であるが、非常に安定であるため、この窒素分子を活性化し有用な窒素化合物に変換する研究は、非常にチャレンジングな研究である。通常、窒素分子はハーバーボッシュ法により多大なエネルギーを用いてアンモニアに変換され、このアンモニアを出発原料として含窒素化合物の合成がなされている。一方で、窒素分子を直接用いて含窒素化合物に変換する例は非常に限られている。 アンモニアを経ない新たな合成法の開発のために、構造明確な分子性錯体を用いた窒素分子活性化の研究が近年盛んに進められている。その多くは強力な還元剤存在下、窒素分子を切断して含窒素化合物に変換するという手法である。分子性金属ヒドリド錯体は窒素分子活性化に対して、ヒドリド配位子が窒素ー窒素切断の還元剤として働くため、新たに添加剤を必要としない特徴がある。我々は最近、3つの金属からなるチタンヒドリド錯体を用いて常温常圧で窒素分子を活性化し、部分的に水素化することに成功した(Science2013)。本年度は、4つのチタン金属からなるチタンヒドリド錯体を用いた窒素分子の活性化と含窒素化合物の直接合成の研究に取り組んだ。 窒素活性化プロセスにおいては、窒素-窒素切断反応に伴った、可逆的な水素分子の付加脱離反応が観察された。この反応は、工業的なハーバーボッシュ法や自然界でのニトロゲナーゼによる窒素分子活性化にも重要な役割を果たしていると考えられており、今回分子レベルで直接観察することに初めて成功した。また、得られたチタン窒素化合物に対して、アシルクロリド(RCOCl)を反応させたところ効率よくニトリル(RCN)を合成することに成功した。また、様々な官能基に耐性があった。今回は、従来法と比べても優位性のある、窒素分子を使った新たな直接合成法の開発に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
チタンを用いた窒素活性化は既に報告しているが、今年度行った窒素活性化研究において、窒素ー窒素結合切断に伴う水素分子の可逆的な付加脱離反応が観察されたことは、大きな成果と考えている。また、活性化された窒素種を含窒素化合物に簡便な手法で効率よく変換する手法も開発することができ、おおむね計画通り研究は進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本反応の適用範囲を探るべく、様々な含窒素化合物の合成に適用できないか、研究を続ける。また、窒素分子活性化について、チタン金属以外の遷移金属や、チタンと他の遷移金属を含む異種混合型ヒドリド錯体等の合成も行い、新たな窒素分子活性化反応の開拓を行う。
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