2015 Fiscal Year Research-status Report
スピン交換相互作用を用いた分子ワイヤ伝導特性の評価法の確立
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26410090
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
東口 顕士 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90376583)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 減衰定数 / 交換相互作用 / ラジカル / 分子ワイヤ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の趣旨は、電気伝導性(抵抗率)をESR測定から見積もる下記の手法を、分子長依存性だけでなく二面角依存性に対して適用可能か検討することである。分子ワイヤの電気伝導特性として代表的なパラメータである減衰定数βは、平易に表現すると、分子ワイヤが単位長さだけ長くなった場合に増加する抵抗を意味する。本来は電気伝導度の変化を用いて決定するが、以前の研究で、ビラジカルの交換相互作用の減衰定数βとの相関を見出している。 手法は、誘導体ごとにESR測定を行い分裂パターンから評価するもので、以前の研究により確立されている。時間分解能が他の測定法に対し極めて高く(ns~μs)、他の代表的測定法では得られていなかったコンフォメーションの高速変化とβの関連について情報が得られることが意義深い。分子設計については、以前行った減衰定数βの場合とはやや異なり、分子長が同じだが二面角は異なる誘導体を複数合成する。 進捗については下記達成度とも重複するが、誘導体の合成もいくつか成功しており、ESRによる物性評価を行えた。分裂パターンから交換相互作用値を求め、二面角の差異によって交換相互作用に大小が現れることを確認した。またコンフォメーションの高速変化に由来した交換相互作用値の分布も捉えているが、それを再現可能なモデルの組み立てはまだ出来ていない。現在は準安定な数成分の重ね合わせとしているが、量子化学計算を用いて分布曲線等を構築し、再度検討を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度は合成の困難さにより進捗が遅れていたが、誘導体の合成に成功しており、ESRによる物性評価を行えた。その際、本研究の意義である「コンフォメーションの高速変化に由来した交換相互作用の変化」も捉えているがモデルの組み立ては出来ていない。今後は誘導体との比較により詳細なモデル構築を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
目的ビラジカル化合物の誘導体の数を増やし、実測データを再現可能なモデルの構築を行う。現在は準安定な数成分重ね合わせとしているが、量子化学計算を用いて分布曲線等を構築し、再度検討を行う。
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Causes of Carryover |
誘導体が複数得られるようになったのは年度末に近い時期であり、測定に関する出費はほとんど行っていなかった。現在は測定や解析との並行作業になっているため、次年度(平成28年度)にまとめて用いる予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
これまで購入しなかった、測定に関する物品(石英管、脱水溶媒等)。シミュレーションソフトの購入も検討中。また発表可能な状態になっているので、旅費や論文投稿費などに充てる。
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