2015 Fiscal Year Research-status Report
ESIPT色素を用いた外場応答型蛍光クロミック材料の開発
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26410098
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Research Institution | Chitose Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
坂井 賢一 千歳科学技術大学, 理工学部, 准教授 (50342788)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 蛍光 / クロミズム / 水素結合 / 励起状態分子内プロトン移動 |
Outline of Annual Research Achievements |
励起状態分子内プロトン移動(ESIPT)型の蛍光色素は、固体状態でも高い蛍光量子収率を達成可能であると同時に、蛍光特性が外部環境の変化に依存して敏感に変化するという特徴を有している。本研究では、このようなESIPT色素の分子内水素結合や分子間水素結合を、外場や外部刺激によって制御することで、蛍光色が多彩に変化する新規蛍光クロミック材料の開発を進め、最終的には電界誘起蛍光クロミック素子や強誘電性蛍光クロミック素子の実現を目指している。今年度は、初年度から開発を進めてきた酸・塩基に応答して分子内水素結合の位置が切換ることで蛍光色が劇的に変化するESIPT色素BTImPの骨格に、様々な置換基を導入した誘導体を合成、それらの蛍光特性を調べることで多彩な蛍光色発現の可能性を探った。その結果、BTImPをドープしたナフィオン膜において、酸塩基処理や乾湿処理により青、緑、橙と3色の蛍光を発現させることに成功し、文字の書込み、消去も可能であることを実証した。この成果は英国化学会の雑誌(J. Mater. Chem. C)に掲載された。また、BTImPの蛍光特性は、近傍に存在するカウンターイオンの種類や温度変化によっても影響を受けることが明らかとなり、単一色素でありながら、青、緑、橙に加え、黄や赤、更には白までのフルカラー蛍光を実現した。今後、詳細を詰め論文に纏める予定である。また、酸化還元特性が期待できる分子骨格にESIPT部位を導入した新規色素の開発にも着手しており、固体蛍光色の電界制御実現に向けて研究を進展させる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分子内水素結合の切換えに起因した蛍光クロミズムを初めて実証することに成功した。一方、この色素を用いて外部刺激に応答したフルカラーの蛍光の発現を達成している。本研究の最終目標は固体蛍光色の電場制御においているため、その点ではまだ成果が得られていないが、フルカラー蛍光という予期しなかった興味深い現象も見出しており、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
固体蛍光色の電場制御に向けて、酸化還元活性が期待出来るビピリジンを基本骨格としてもつ新規ESIPT色素の合成にも着手している。近年報告されたビピリジン骨格の合成手法を適用して現在精力的に合成を進めている。
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Causes of Carryover |
ほぼ予定通りに使用しました。残金1円です。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H28年度分と併せて使用予定です。
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Research Products
(6 results)