2015 Fiscal Year Research-status Report
光により変形するフォトクロミック圧電結晶を用いた光電変換
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26410101
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
森本 正和 立教大学, 理学部, 准教授 (70447126)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 超分子化学 / 分子性固体 / フォトクロミズム / ジアリールエテン / 圧電効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
フォトクロミック分子の光異性化反応により変形して圧電効果を示す分子結晶(フォトクロミック圧電結晶)を創製することを目的として、フォトクロミック分子結晶の光誘起変形挙動、ならびに新しい極性結晶の構築に向けた新規フォトクロミック分子の合成について検討した。 昨年度に検討したフォトクロミック分子結晶に加えて、極性空間群に属する別のフォトクロミック分子結晶について光異性化反応に伴う結晶格子変形を観測した。光照射による結晶格子変形を単結晶X線構造解析により追跡したところ、紫外光照射によるフォトクロミック分子の閉環反応に伴い格子定数が変化し、可視光照射による開環反応に伴い格子定数がもとに戻ることが観測された。この結晶は分子間水素結合の一次元鎖構造を形成しており、結晶格子変形に伴い水素結合一次元鎖が可逆的に伸縮することも示唆された。昨年度検討した例も含めて、極性結晶構造を有するフォトクロミック分子結晶の光誘起変形は一般的に起こり得る現象であることが示唆された。 極性結晶を合理的に設計・合成するための新しいフォトクロミック分子骨格として、チエノピリジンを有するジアリールエテンについて検討した。チエノピリジンは分子間水素結合や金属配位結合が可能な窒素原子を含んでおり、結晶構造制御において有効な置換基と考えられる。チエノピリジンを有するジアリールエテン誘導体2種を新規に合成したところ、これらの分子は溶液中で可逆的なフォトクロミズムを示した。また水酸基を有する異種分子と混合して再結晶すると、ジアリールエテンと異種分子とが分子間水素結合を形成した結晶構造が得られた。キラルな異種分子との水素結合を含む2成分結晶を合成することにより、強制的に極性結晶構造を構築することも可能になると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
極性結晶構造を有するフォトクロミック分子結晶の光誘起結晶格子変形については、一般的に起こり得る現象であることを明らかにしつつある。また、新たな極性結晶の構築に向けた物質合成にも着手し、分子間水素結合を形成する新しいフォトクロミック分子骨格を設計・合成することで研究対象物質の候補を広げた。これまでに得た光誘起結晶格子変形に関する知見を踏まえて、発生電流の測定系の調整を行いながら、新たに合成する物質も含めて検討することにより、光誘起圧電効果の観測と実証を目指したい。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに光誘起結晶格子変形を観測したフォトクロミック分子結晶に加えて、分子間水素結合を含む2成分結晶なども新規に合成しながら、それらについて検討することで、光誘起圧電効果の観測と実証を目指す。発生電流の測定装置や試料調整法、光照射条件などを検討し、計測精度の向上を図る。圧電効果が観測された場合には、分子構造や結晶構造との相関を検討し、高効率化を試みる。
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Causes of Carryover |
「その他」として論文投稿費を見積もっていたが、論文発表した学術雑誌については論文投稿費が不要であったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
残額は次年度分とあわせて、合成用試薬・ガラス器具・光学部品などの物品費として有効に使用する予定である。
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Research Products
(7 results)