2015 Fiscal Year Research-status Report
キラルな炭素-炭素を構築するアリル化反応の可能性をさらに広げる基礎的研究と応用
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26410111
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
小林 雄一 東京工業大学, 大学院生命理工学研究科, 教授 (90153650)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アリル化反応 / ピコリン酸脱離基 / 有機銅試薬 / 第四級炭素 / メゼンブリン / スポロクノール / アナストレフィン / 立体選択的 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々の見出した第二級アリルピコレートと有機銅試薬とのアリル化反応は位置選択的かつ立体選択的に進行し,キラル炭素をもつ生成物を与える。本申請では,この反応をさらに発展する研究を行い,以下の成果をあげた。 (1) シクロヘキシリデンアリルピコレートとMe銅試薬とのアリル化反応を活用して六員環上に第四級炭素とラクトン環をもつアナストレフィンの立体選択的な合成に成功した。鎖状炭素骨格上に第四級をもつスポロクノールとセレトニン拮抗薬(LY426965) の合成研究では,三置換オレフィンから成る3,3-ジ置換アリルピコレートの立体選択的な合成を開発した。これらのジ置換アリルピコレートのアリル化は効率的に進行した。アルカロイドの一種であるメゼンブリンの合成では,上で言及した3,3-ジ置換アリルピコレート合成法を応用して第四級炭素を構築し,分子内アルドール反応を行なった。五員環上でビニル銅試薬とアリル化反応を行い,キニーネの重要中間体の簡便な合成法を検討した。 (2) 第二級アリルピコレートは反応性の低いヘテロ環銅試薬とも選択的かつ高収率に反応した。 (3) これまでのアリルピコレートの反応ではGrignard試薬から銅試薬を調製していたのに対し,有機リチウム由来の銅試薬についても検討した。その結果,異なる銅塩の選択が重要であることを見出した。 (4) アリルフォスフェートとジアリールメタンとの反応をアルキルフォスフェートに適応したところ,スムーズに進行した。さらに反応の立体化学を精査した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は第二級アリルピコレートと有機銅試薬とのアリル化反応に使用可能な基質 (ピコリネート) と銅試薬の適応範囲を広げる研究を行なった。特に,3,3-ジ置換アリルピコレートから第四級炭素の構築に成功したことは特筆に値する。また,得られた成果を活用して幾つかの生理活性化合物を合成し,アリル化反応の可能性を示した。
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Strategy for Future Research Activity |
以下の研究を計画している。(1) 第四級炭素をもつ生理活性化合物の合成を続ける。(2) 遷移状態モデルを実験的に求める。(3) 五員環上でビニル銅試薬とアリル化反応を引き続き検討し,キニーネの重要中間体の合成法を完成させる。アルキルフォスフェートとジアリールメタンとの反応を引き続き検討し,反応性,立体選択性を調べる。(4) 3位にアリール基をもつアリルエステルと有機銅試薬とのアリル化反応は難しいとされてきた。エステルとしてピコレートを用い,有機銅試薬との反応を検討する。
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Research Products
(13 results)