2016 Fiscal Year Research-status Report
キラルな炭素-炭素を構築するアリル化反応の可能性をさらに広げる基礎的研究と応用
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26410111
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
小林 雄一 東京工業大学, 生命理工学院, 教授 (90153650)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アリル化反応 / ピコリン酸脱離基 / 有機銅試薬 / 有機リチウム試薬 / アルキルホスフェート / ボンジルホスフェート / マグノルオール / ベラパミル |
Outline of Annual Research Achievements |
第二級アリルエステル上でのアリル化反応を見出す研究を行ない,有機マグネシウム試薬とCuBrから調製した有機銅試薬が第二級アリルピコリン酸エステルと anti SN2' 反応することを見出している。このアリル化反応は高位置選択的かつ高立体選択的に進行し,キラル炭素をもつ生成物を与える。本申請では,この反応をさらに発展する研究を行い,以下の成果をあげた。 (1) これまで有機銅試薬は有機マグネシウム試薬とCuBrまたはCu(acac) から調製していた。今回,試薬の幅を広げるため,有機リチウムから調製した有機銅試薬について研究し,高選択的な anti SN2' 反応を実現した。(2) このアリル化反応の反応サイト近傍の立体障害の影響を調べるため,i-Pr基を有するverapamil を選び合成研究を行った。その結果,3,4-(MeO)2C6H3MgBrとCu(acac)2 の 2:1 試薬を用いると反応は遅くなったが SN2' 反応は選択的に進行した。この結果から,試薬を過剰に入れると反応は完結した。一方,ZnI2を加えた(MeO)2C6H3MgBr/Cu(acac)2/ZnI2 = 3:1:1 試薬ではラセミ化した。(3) 前年度見出した第二級アルキルホスフェートとジアリールメタンアニオンとの反応における立体化学を研究し,95%以上の選択性で立体反転を伴って反応することを検証した。(4) 上記反応基質として置換基を持つ六員環アルコールアルキルホスフェートを用いたところ,ホスフェート基がアキシャル位にくる椅子型コンホマーの安定性によって反応のスピードが制御されることを見出した。(5) マグルオール合成の際にアリール環上(芳香環上)にアリル基を導入する反応を検討し,アリールホウ素/Pd触媒系が試薬として適していることを見出し,全合成を達成した。またこの際,オルト位選択的な脱ヨウ素化反応にも見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は第二級アリルピコリン酸と有機リチウムから調製した有機銅試薬とのアリル化反応を開発し,アリル化反応の適応範囲を広げることがてきた。このアリル化反応を応用して,verapamil の合成を行った。第二級アルキルホスフェートとジアリールメタンアニオンとの反応の立体化学を検討できた。
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Strategy for Future Research Activity |
以下の研究を計画している。(1) 第四級炭素をもつ生理活性化合物の合成を続ける。(2) 遷移状態モデルを実験的に求める。(3) アルキルフォスフェートとジアリールメタンとの反応を引き続き検討し、反応性、立体選択性を調べる。(4) アリル基のγ位にアリール基をもつアリルエステルと有機銅試薬とのアリル化反応は難しいとされてきた。エステルとしてピコレートを用い、有機銅試薬との反応を検討する。
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Research Products
(9 results)