2015 Fiscal Year Research-status Report
連続不斉四級炭素をもつ擬天然生理活性化合物の創製を指向した精密迅速合成
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26410116
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大松 亨介 名古屋大学, 工学研究科(WPI), 准教授 (00508997)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 不斉合成 / 反応開発 / 多連続不斉炭素 / キラル配位子 / パラジウム |
Outline of Annual Research Achievements |
天然物や医農薬といった有機化合物には、その骨格中に不斉四級炭素(四つの異なる炭素置換基を持つ不斉炭素)を有するものが数多く存在している。本研究では、代表者が独自に開発してきた高機能で構造多様性に富んだ不斉触媒を武器に、不斉四級炭素をもつ複雑なキラル化合物群の効率的不斉合成法の開発に取り組んでいる。これまでに開発したキラルオニウム複合型パラジウム錯体の活用に基づき、今年度、三つの連続する不斉炭素の絶対立体化学制御を必要とする高難度不斉[3 + 2]環化付加反応の開発を行った。 具体的には、パラジウム錯体を触媒とする5-ビニルオキサゾリジノンと幾何異性体混合物である三置換アルケンの高効率かつ高立体選択的不斉環化付加反応の開発に取り組んだ。本反応を高立体選択的に進行させるには、三置換アルケンのプロキラル面の識別、閉環段階でのプロキラルエノラートの識別、面不斉π-アリルパラジウムの立体制御の三つの絶対立体化学制御を同時に達成する必要がある。 まずアキラルな配位子や市販のキラル配位子を用いて反応を行ったところ、全く反応がしないか、あるいは反応が進行しても八つの立体異性体を含む複雑な混合物が得られるという結果になった。それに対して、独自に開発したキラルアンモニウムホスフィン複合型配位子を用い、その特徴であるアニオンとカチオンの多彩な組み合わせを駆使した配位子探索を行ったところ、効率的に反応が進行し、八つの異性体のうち一つを高選択的に生成させることに成功した。更に、生成物の各不斉点の立体化学決定段階について明らかにした。特に、面不斉π-アリルパラジウムの立体化学収束過程については一部重水素化したオキサゾリジノンを使って反応を行うことにより明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度に続き、代表者がこれまでに開発したキラルオニウム複合型パラジウム錯体が、様々な高難度不斉合成反応に有効であり、多様な複雑キラル化合物の精密合成に対応可能であることを実証してきている。
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Strategy for Future Research Activity |
より複雑なキラル化合物、例えば、二連続不斉四級炭素を有するキノリンアルカロイド誘導体やピペリジノインドールなどの含窒素六員環化合物を主要ターゲットに定め、それらの効率的不斉合成法の開発を継続する。そのために、鍵反応となる触媒的不斉環化付加反応を新たに開発する。いずれの反応でも、代表者が開発したイオン対型配位子からなるパラジウム錯体を触媒として利用し、その高い立体制御能と幅広い構造多様性を駆使して、標的反応の完全制御を目指す。既存の配位子では反応促進・立体制御が困難となる場合には、反応開発と並行して、より高性能な触媒の設計・合成にも取り組む。
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Research Products
(12 results)