2014 Fiscal Year Research-status Report
単糖連結型ビフェニル基含有π共役高分子を活用するスイッチングキラル固定相の創成
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26410129
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
井改 知幸 金沢大学, 物質化学系, 准教授 (90402495)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | グルコース / 共役高分子 / キラリティー / 高次構造 / 軸不斉 / スイッチング / 光学分割 / コンホメーション |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、“グルコース環の不斉なねじれにより軸不斉が制御されたビフェニルユニット”を主鎖骨格に含有する新規π共役高分子を合成し、それらのキロプティカル特性について検討した。 出発原料に9,10-フェナントレンキノンを用いた七段階の反応によりグルコース連結型ビフェニルユニットを有するジエチニル化合物(Gl)を合成した。得られたGlと5,5’-ジヨード-2,2’-ビチオフェンとの薗頭カップリングによる重合を、パラジウム触媒存在下、THF-ジイソプロピルアミン混合溶媒中、60 °Cで行うことにより、数平均分子量が数万程度の新規π共役高分子poly-1を得た。 Poly-1の円二色性(CD)スペクトルをクロロホルム及びクロロホルム-アセトニトリル混合溶媒中で測定したところ、共役主鎖骨格に由来する吸収領域(300~500 nm)に明確なコットン効果が観測された。また、アセトニトリルの割合が高くなるに連れて、吸収スペクトルにおける淡色効果及びCD強度の著しい増大が見られた。また、ポリマー濃度を0.01~1.0 mMの範囲で変化させてもCD及び吸収スペクトルにほとんど変化が見られないことから、溶媒の違いによるスペクトルの変化がポリマーの会合状態によるものではなく、一分子内のコンホメーション変化に起因することを示唆している。おそらく、アセトニトリルを含む溶媒中では、poly-1はらせん構造のような高次構造を形成していると考えられる。 クロロホルムをキャスト溶媒に用いてpoly-1薄膜を調製し、固体状態におけるCD測定を行ったところ弱いながらもコットン効果が観測された。本フィルムをアセトニトリル蒸気にさらしたところ、CD強度の増大及び吸収波長のシフトが観測され、固体状態においても外部環境の変化により、poly-1のコンホメーションをスイッチングできることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請時には、平成26年度の研究計画として、「グルコースユニット含有π共役高分子の合成法の確立」及び「薄膜状態における高次構造スイッチング法の確立」の二つの課題を挙げていた。 研究実績の概要に記載の通り、平成26年度内に目的とするポリマーの開発に成功し、薄膜状態における高次構造スイッチング法も確立できたので、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は「おおむね順調に進展している」ため、当初の計画通り、以下に示す3つの課題に取り組んでいく。 「1. カラム内高次構造スイッチに伴う光学分割能の切換え」→ Poly-1をコーティングした大孔径シリカゲルをステンレスカラムに充填する。昨年度確立した薄膜状態におけるらせん構造制御法を応用して、“カラム内に固定相として存在するpoly-1主鎖にらせん構造を形成させる”。カラム内で片巻らせん構造を形成していることは、同様に調製した別のカラムから充填剤の一部を取り出し、溶かし出したポリマーを分析することにより確認する。順相系及び逆相系溶離液を用い、それぞれの状態のキラル固定相の評価を行う。カラム内で高次構造スイッチが達成されていれば、光学分割能が切換わることになる。
「2. スイッチングキラル固定相の“性能向上”及び“新概念の普遍化”」→ “単糖ユニット”や“平面共役ユニット”の種類を変え、これまでと同様の研究項目について検討を行う。さらに、アミド基やウレア基等の極性基を側鎖に導入し、“水素結合ネットワークによる高次構造の安定化”及び“キラル固定相の相互作用強化”を図る。
「3. シリカゲル表面への固定化」→ 本課題で開発する固定相は、“カラム内における高次構造スイッチの繰返し”を前提としている。そのため、シリカゲル担体からポリマーが剥離しやすく、カラムの耐久性が低いことが予想される。より実用的なスイッチングキラル固定相を開発するために、Poly-1をシリカゲルに化学結合することを試みる。
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Research Products
(2 results)