2015 Fiscal Year Research-status Report
単糖連結型ビフェニル基含有π共役高分子を活用するスイッチングキラル固定相の創成
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26410129
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
井改 知幸 金沢大学, 物質化学系, 准教授 (90402495)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | グルコース / 共役高分子 / キラリティー / 高次構造 / 軸不斉 / スイッチング / 光学分割 / コンホメーション |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、昨年度合成した“グルコース環の不斉なねじれにより軸不斉が制御されたビフェニルユニットを主鎖骨格に含有するπ共役高分子(poly-1およびpoly-2)”を“高速液体クロマトグラフィー用キラル固定相”に応用し、それらの“主鎖コンホメーション”や“側鎖構造”が、“光学分割能”に及ぼす影響について詳細に検討を行った。 らせん構造またはランダムコイル構造(以下、接頭辞としてhel-またはran-を付す)を有するpoly-1およびpoly-2からそれぞれキラル固定相を調製し、様々なラセミ化合物に対する光学分割能の評価を行った。この際、側鎖の極性官能基がラセミ化合物と有効に相互作用するように、順相系溶離液としてhexane/2-propanol (90/10, v/v) 混合溶媒を用いて評価を行った。側鎖にアミド基を含有するpoly-1がらせん構造を形成する場合(hel-poly-1)、点不斉や軸不斉を有する化合物、さらにはキラルな金属錯体の光学分割が可能であった。一方、ran-poly-1を用いたところ、キラルな金属錯体のみ分割可能であり、その溶出順序はhel-poly-1を用いた際と逆になることが分かった。一方、エステル基を含有するhel-poly-2は、キラルな金属錯体に対して、分離係数が1.5を超える良好な不斉識別能を示した。また、対応するランダムコイル構造のポリマー(ran-poly-2)は、hel-poly-2では分割不可能であった点不斉を含有するらセミ化合物に対して明確な不斉識別能を示すことが分かった。以上の結果から、豊富なバイオマス資源である“グルコース”のキラリティーを巧みに利用することで、主鎖コンホメーションの違いを反映した特徴的な不斉識別能を示すキラル固定相が開発可能であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請時には、平成27年度の研究計画として、「コンホメーションスイッチングに伴う光学分割能の切換え手法の確立」の課題を掲げていた。 研究実績の概要に記載の通り、平成27年度内に、目的とするコンホメーションに依存したキラル固定相の能力スイッチングに成功している。さらには、カラム内に固体状態として存在するポリマーのコンホメーションを、らせん構造からランダムコイル構造に切り替えることにも成功しており、カラム内機能スイッチングに向けた有力な知見も得られている。以上の結果から、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は「おおむね順調に進展している」ため、当初の計画通り、以下に示す2つの課題に取り組んでいく。
「1. スイッチングキラル固定相の“性能向上”及び“新概念の普遍化”」→ “単糖ユニット”や“平面共役ユニット”の種類を変え、これまでと同様の研究項目について検討を行う。さらに、アミド基やウレア基等の極性基を側鎖に導入し、“水素結合ネットワークによる高次構造の安定化”及び“キラル固定相の相互作用強化”を図る。
「2. シリカゲル表面への固定化」→ 本申請で提案する固定相は、“カラム内における高次構造スイッチの繰返し”を前提としている。そのため、シリカゲル担体からポリマーが剥離しやすく、カラムの耐久性が低いことが予想される。より実用的なスイッチングキラル固定相を開発するために、上述のポリマーをシリカゲルに化学結合することを試みる。具体的な方針を以下に示す。上述のポリマーは、らせんキラリティに基づき不斉識別能を発現するため、化学結合する際には、高次構造スイッチング能を阻害しないように、“ポリマーの末端”のみでシリカゲルに結合させる必要がある。また、以前の研究から、架橋部位として“トリアルコキシシリル基”を用いることで、定量的に高分子を固定化できることが分かっている(J. Chromatogr. A, 2007, 1157, 151)。以上を踏まえ、“ポリマーの末端にトリアルコキシシリル基を有する当該ポリマー”を用い、固定化することを考えている。
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