2015 Fiscal Year Research-status Report
触媒トラップ法によるポリチオフェン末端への簡便で確実な官能基導入
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26410131
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
高木 幸治 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60303690)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ポリチオフェン / 熊田触媒移動型重合 / ニッケル触媒 / 末端官能基化 |
Outline of Annual Research Achievements |
優れた化学安定性、高い電荷移動度、有機溶剤に対する溶解性などの点で注目を集めているポリ(3-ヘキシルチオフェン)は、横澤らが開発した熊田触媒移動型重合(KCTP)により一次構造が明確に定義されたポリマーが得られる。一方、KCTPは非常に洗練された重合法であるが、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)の末端修飾は限定的である。例えば、リビング生長末端を別のGrignard試薬で反応停止させる方法では、Grignard試薬の種類によって、片末端もしくは両末端に置換基導入される場合があり、その詳細は不明である。また、単離したポリ(3-ヘキシルチオフェン)を高分子反応によって末端修飾する場合、過剰量の試薬が必要になる上、定量的に反応させることは困難である。他方、ポリチオフェン誘導体をデバイス材料として応用するには、末端構造が重要であることが近年多くの研究者によって報告されている。従って、簡便で信頼性の高い末端修飾法の開発が急務となっている。 本研究では、3,4位にさまざまな置換基を有するチオフェン誘導体から調製されるGrignard試薬を停止剤かつ官能基導入剤として用いることにより、上記問題を解決することを目的とする。 今年度は、まず昨年度問題となった課題解決に向け、2-ブロモ-3,4-ジメチル-5-ヨードチオフェンを停止剤前駆体として合成した。これから調製されるGrignard試薬を停止剤とした場合、ニッケル触媒の配位子やリチウム塩の添加により付加の起こりやすさに違いが見られることを明らかにした。次に、3位あるいは4位にメトキシ基をもつ2-ヨードチオフェンを停止剤前駆体として合成した。配位子の種類に関わらず、3-メトキシ体の場合は片末端、4-メトキシ体の場合は両末端に停止剤が導入されることが分かった。これより、生長末端のビチオフェン単位の立体環境が触媒移動に影響することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
チオフェンの3,4位にアルキル基を有する停止剤では、配位子やリチウム塩が及ぼす影響を明らかにした。予想した通り、触媒もしくは停止剤を活性化しないと立体障害から停止剤との反応が抑制されることが分かった。一方、マグネシウムに配位可能なエーテル酸素を導入することで、停止剤の反応性が向上することも分かった。これまでに研究代表者が合成、重合してきたピリジン型モノマーと矛盾しない結果となった。さらに、その導入位置を変えることにより、還元的脱離した後のゼロ価ニッケルの分子内移動しやすさを制御できた。これらの結果は、別途合成したモデル化合物との比較から支持されたが、これら化合物は熊田カップリングでは合成できず、鈴木カップリングによってのみ合成できた。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、メトキシチオフェンを停止剤とした場合のモデル化合物合成の詳細を明らかにする。既に行った2-クロロマグネシオ-3-ヘキシルチオフェンと2-ヨード-3(4)-メトキシチオフェンとの反応に加え、2-ブロモ-3-ヘキシルチオフェンと2-クロロマグネシオ-3(4)-ヨードチオフェンとのクロスカップリング反応を検討する。これらの結果は、ニッケルおよびパラジウム触媒反応の基礎を理解する上で非常に重要であり、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)の末端修飾に有益な知見を与えるものである。次に、2-ブロモ-3-オキサゾリルチオフェンを新たに合成し、これから調製されるGrignard試薬を停止剤として用い、末端にオキサゾリン環を有するポリ(3-ヘキシルチオフェン)の合成を目指す。
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Causes of Carryover |
合成ルートの工夫と実験の小スケール化をはかり、消耗品費を抑えることができたため。また、別途予算確保することができ、一部はそちらで物品購入したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験に必要な備品は揃えることができているので、合成に必要な消耗品を中心に予算執行し、研究がさらに加速するよう努める。特に、金属触媒は高価であるため、これの購入に充てることとする。
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Research Products
(1 results)