2015 Fiscal Year Research-status Report
スピンコート成膜プロセスにおける有機高分子薄膜の活性界面形成キネティクス
Project/Area Number |
26410135
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
佐々木 園 京都工芸繊維大学, その他部局等, 教授 (40304745)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | スピンコート成膜法 / 線状高分子薄膜 / 結晶化挙動 / 放射光 / 微小角入射小角・広角X線散乱測定 / 結晶化誘導期 / 結晶化速度 / 溶液の濃度ゆらぎ |
Outline of Annual Research Achievements |
スピンコート法は、高分子溶液を基板に滴下後、基板を高速回転させることにより数nm から数μm の膜厚の薄膜を短時間で成膜可能な手法である。基板回転開始から数十秒で成膜が完了するため、この間の高分子の結晶化キネティクスについては明らかにされていない。本研究の目的は、スピンコート成膜過程における有機高分子薄膜の活性界面形成キネティクスを放射光の高輝度X線を利用した散乱法により明らかにすることである。 平成27年度は、線状高分子を試料に用いて、微小角入射小角・広角X線散乱(GISWAXS)時間分解測定により高分子薄膜の結晶化挙動を検討した。放射光利用実験は、大型放射光施設SPrng-8のBL45XUビームライン((国研)理化学研究所)で実施した。広角X線散乱データに基づき結晶化誘導期と結晶化速度、そして小角X線散乱データから長周期構造を評価し、基板の回転速度や高分子溶液の濃度との影響について検討した。測定試料としてポリカプロラクトン(PCL)のトルエン溶液を用いた場合は、基板回転速度が増大すると結晶化誘導期と長周期構造が出現するまでの誘導期が短くなることが判った。また、結晶化が開始する以前に基板表面に垂直な方向に約12.5nm周期で溶液の濃度ゆらきが発生することが示唆された。生成したラメラ晶は、スピンコート成膜初期から分子鎖折りたたみ面が基板表面に平行なFlat-on型配向を示す傾向があることが判った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度前半に放射光利用実験用に設計・製作した小型スピンコーターが輸送中に運送業者のトラック事故で破損するアクシデントがあった。平成27年度後半に新調した装置を用いて以前行なった測定条件で放射光利用実験を行ない、新旧の装置で測定データに大きな違いがないことを確認した。その後当初予定していた実験の8割を終えることが出来たことから、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、以下の実験を実施し研究を総括する予定である。 ①分子量の異なるPCLのトルエン溶液を用いでスピンコート成膜実験を実施し、PCLの結晶化キネティクスに対する分子量の影響について議論する。 ②過去のスピンコート実験で測定したGISAXSデータに対する検討が不十分である。線状高分子と高分子/低分子ブレンドの溶液で観測されたSAXSパターンの基板回転速度、溶液濃度、高分子の分子量、溶媒の影響などを検討する。 ③これまでの研究成果を論文にまとめる。
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