2014 Fiscal Year Research-status Report
小粒子を多数内包したマイクロカプセルの一段階作製法の開発
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26410136
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
鈴木 登代子 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 助手 (40314504)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 高分子合成 / ラジカル重合 / カプセル / Yolk-shell / 懸濁重合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,内包される小粒子のサイズ制御法を含めた小粒子内包カプセルの一段階作製法の開発を行ない,生成機構を解明すると共に,生成する粒子の構造とそれらが発現する物性について体系化することを目的とする。 本年は特に,1.最適溶剤系の開発と生成機構の解明,2.内包小粒子への運動性付与,3.内包小粒子の数と大きさの制御,に関する検討に取り組み,本年度は以下のような研究成果が得られた。 1.従来系ではポリマーを溶解した液晶をカプセル化の溶媒として用いており,その粘度の高さが問題であった。そのため,カプセル壁及び小粒子を構成するポリマーに対して,良溶媒(トルエン,キシレンなど)と,PSに代わる貧溶媒(高級炭化水素,高級アルコールなど)を混合した「溶剤組成」の組合せを検討した。その結果,トルエンとヘキサデカンの混合溶液を用いることにより,小粒子内包カプセル粒子を作製することができた。生成機構の解明の中で,懸濁滴内で重合生成するミクロゲルのモビリティ(分子量,拡散性,媒体の粘度などによる)が,カプセル壁および小粒子の形成に強い影響を及ぼしていることが明らかとなった。 2.内包小粒子への運動性付与のために,「分散安定剤の添加」について検討を行った。分散安定剤の存在はシェル壁形成の抑制に繋がったため,各種の高分子量分散安定剤を検討したが,なかでも,ラジカル重合の開始能を有するポリジメチルシロキサン(PDM)マクロイニシエーターが最適であった。滴内で生成するミクロゲルに共有結合させることにより,非常に良い分散安定性が小粒子に付与された。 3.内包小粒子の粒子径を制御するために,懸濁滴径,開始剤濃度,分散安定座濃度など各種重合因子を検討したところ,上記検討で用いたPDMマクロイニシエーターの分子量,および添加量が,内包小粒子の粒子径に顕著に影響を与えることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
小粒子内包カプセル粒子を作製するためのカプセル化溶媒をポリマーが溶解した液晶から汎用溶液にすることが最も重要な課題であったが,最適溶剤系を見つけることができた。さらに,小粒子の粒子径に大きな影響を及ぼす重合因子を明らかにすることができ,内包される小粒子のサイズ制御法を含めた小粒子内包カプセルの一段階作製法の開発に重要な知見を得ることができた。しかしながら,小粒子が小さくなりすぎるとカプセル内に充填される粒子数が増えるために,小粒子の運動スペースが減少し,カプセル全体で見ると運動性が低下する傾向があった。最適なバランスを今後見出していきたい。 また,PDMマクロイニシエーターについて,その重要性が明らかになった後,PDMの分子量が異なるものを入手しようと試みたが,海外の試薬会社への受託注文しかなく,入手に時間がかかってしまった。平成27年度はこれらを用いて新たに検討を行っていく。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,運動空間の確保のために「ポリマー/溶剤比」について検討を行う。微少圧縮試験器などを用いてカプセルの強度が十分に保たれることを担保しながら検討を進める。内包小粒子の数と大きさの制御を目指して,主として小粒子が形成する沈澱重合の観点からの検討を行う。「滴内の分散安定剤の存在の有無」による内包される小粒子のサイズの影響の検討を引き続き行うほか,初年度に決定した最適溶剤系をベースに「貧溶剤の添加」を行う。架橋オリゴマーに対して貧溶媒を加えれば,滴内でオリゴマーの相分離が促進されるため,一次粒子が多数発生し,凝集→大粒径化が起こりやすい。架橋度を低下させた共重合系や,沈殿重合の初期核となる微小粒子の存在系にて重合を試みる。 また,小粒子内包カプセル粒子の生成機構として,懸濁滴内でのミクロゲルのモビリティが,カプセル壁もしくは小粒子を形成するポリマーの比を決定していることが示唆されたので,重合初期のミクロゲルのモビリティについて,NMRや分光法を用いて明らかにしていきたい。また,小粒子の分散安定性には,ポリジメチルシロキサン(PDM)マクロイニシエーターの影響がとても大きかったため,小粒子への導入量をNMR等を用いて定量する。ようやく入手した分子量の異なるPDMマクロイニシエーターを用いても検討を行う。 これらの検討をまとめ,小粒子内包カプセルの一段階作製法を確立したい。
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Causes of Carryover |
導入予定であった機器が研究グループ内共通機器として別途導入されたこと,および雇用予定であった技術補佐員が確保できなくなったことがあげられる。また,必要とした試薬の入手に時間がかかってしまったことも原因のひとつである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
初年度検討中に見出された重要知見であるマイクロゲルの解析のために必要な実験環境を作ることと,技術補佐員を雇用する予定である。また,本年度は国内学会ばかりでなく,専門分野に特化した国際学会に参加し,研究成果を発表を行う予定である。
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Research Products
(4 results)