2015 Fiscal Year Research-status Report
水系刺激応答性ポリマー鎖間に働く疎水性相互作用の分子制御
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26410137
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
勝本 之晶 福岡大学, 理学部, 准教授 (90351741)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | PEO-PPO 交互マルチブロックコポリマー / テレケリックpoly(oxazoline) / 相分離 / ヒステリシス / 高分子ミセル |
Outline of Annual Research Achievements |
H26年度に合成したPEO-PPO 交互マルチブロック(AMB)コポリマーおよび両末端にカルボン酸をもつPoly(2-isopropyl-2-oxazoline) (dicarbonyl PiPrOx)の溶液物性測定を行った.PEO-PPO AMBコポリマーは界面活性を示し,表面張力測定および蛍光プローブ法でもとめた25℃の水溶液の臨界ミセル濃度は1.0E-6 mol/Lであった.一定濃度以上のPEO-PPO AMBコポリマー水溶液は,温度を上げることに酔って白濁した.これは高温でコポリマーの水への溶解度が下がることが原因と考えられ,当初の予想通りPPO鎖間の疎水性相互作用によってコポリマーの熱応答性が誘起されたことを示唆している.透過率測定によって決定したPEO-PPO AMBコポリマー水溶液の相境界線は下限臨界相溶型であった.動的光散乱測定を行うと25 ℃における1 wt%水溶液は二峰性の粒径分布を示し,小さい粒径は単分子,大きい粒径は多分子ミセルに起因すると考えられる.また,コポリマー水溶液の温度を上げると相分離温度よりも30 ℃程低い温度で,均一粒径をもったミセルの形成が示唆された.これは,いくつかのPEO-PPO-PEOトリブロックコポリマー水溶液で観測される現象と良く似ている, また透過率測定によって,dicarbonyl PiPrOx水溶液の相分離課程を調べた.昇温,降温速度を系統的に変化させて透過率測定を行った結果,dicarbonyl PiPrOx水溶液には強いヒステリシスが見つかり,昇温前のdicarbonyl PiPrOx水溶液が準安定状態であることが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定であった,PEO-PPO AMBコポリマーおよび両末端にカルボン酸をもつdicarbonyl PiPrOxの溶液物性の測定と解析が順調に進み,水溶液中においてこれらの高分子がどのような状態にあるのかについての詳細な知見を得た.PEO-PPO AMBコポリマーは,分子設計時に期待した通り,PPOブロック鎖間の疎水相互作用によって高分子ミセルをつくることと,下限臨界相溶型の相分離を起こすことがわかった.dicarbonyl PiPrOx水溶液が示すヒステリシスは予想していたものと異なっており,その原因解明をマルチブロック化と並行して行う必要がでてきた.当初予定していたテレケリックPoly(N-isopropylacrylamide) (PNiPAm)のマルチブロック化は難航している.その原因は,RAFT重合を行った際にできるテレケリックPNiPAmの主鎖中央にあるトリチオカーボネート基が,マルチブロック化を行うカルボン酸とアミンの脱水縮合時に切断されるためである.現在,合成経路を再検討しているところである.
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Strategy for Future Research Activity |
進捗状況に述べたように,計画に若干の修正を加える必要が出ている.現在合成したPEO-PPO AMBコポリマーのPEO/PPO比では,水溶液で高分子ミセルを形成するものの,分子設計指針であった分子内の疎水性相互作用による単分子ミセルの形成を達成できていない.これはおそらく,ブロック中のPPO比が低いためコポリマー全体の親水性が高くなっているためではないかと考えている.そこで,ブロック中のPPO比の高いPEO-PPO AMBコポリマーを合成することを新たに計画している. dicarbonyl PiPrOx水溶液が示す強いヒステリシスについては,濃度依存性や鎖長依存性を測定してその原因を解明する必要がある.テレケリックPNiPAmのトリチオカーボネート基が脱水縮合反応時に切断される問題は,トリチオカーボネート基を一旦切断し,片末端をチオール基にしてからマルチブロック化を行う方法を検討している.
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