2014 Fiscal Year Research-status Report
多様な骨格導入を可能とする交差共役高分子の合成と機能性高分子への変換
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26410141
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Research Institution | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
Principal Investigator |
小泉 俊雄 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工, その他部局等, 教授 (60225349)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 交差共役化合物 / 共役化合物 / クロスカップリング重合 / パラジウム触媒 / 不均一系パラジウム触媒 / Diels-Alder 反応 / オルトフェニレン |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、特殊構造高分子の1つであるオルトフェニレン含有高分子への変換反応を検討した。フルオレンなどの芳香族ジボロン酸をモノマーとして均一系Pd触媒を用いて重合を行い、種々の2,3-ブタジエニレン骨格をもつ交差共役高分子を合成した。続いてアセチレンジエステルとのDiels-Alder反応を検討し、2,3-ブタジエニレン骨格は全てシクロヘキサジエン骨格へ変換できることを明らかにした。さらに、酸化反応によりシクロヘキサジエン骨格をベンゼン環に完全に変換することができた。また、UV-vis吸収スペクトル、蛍光スペクトル測定を実施し、骨格変換に伴って光学的性質が変化することを見出した。 交差共役高分子のDiels-Alder反応は、検討に用いた全てのジエノフィルで効率良く進行した。反応部位を2つもつベンゾキノンとの反応では、架橋反応が進行してネットワーク高分子が生成したことから、この高分子反応は進行し易いことがわかった。 グリーンケミストリを指向した不均一系Pd触媒を用いた重合条件の検討では、Pd/C及びPd/iO-brane(関東化学社製)を用いモデル反応を実施した。Pd/Cは有効な触媒であり、収率60%以上で交差共役化合物が得られた。しかしながら、重合に適用するにはさらに反応効率を向上させる必要があった。Pd/iO-braneはPdナノ粒子が分散した有機無機ハイブリッド膜である。この触媒は均一系Pd触媒と同程度に収率良く目的物を与えたので、重合を含めて27年度でさらに検討を加えていく予定である。 その他、モデル反応の一環として分子内に2つのピレン骨格をもつ交差共役化合物の合成を行い、極性溶媒中ではピレン環同士がπスタックした配座が有利であるが、芳香族系溶媒中では、全くスタックしていない配座が有利であることが明らかとなり、交差共役高分子の溶液中での立体配座に関する有益な情報を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
26年度の重要な課題の1つは、2,3-ブタジエニレン([2]デンドラレン)骨格をもつ交差共役高分子のオルトフェニレン骨格を有する共役高分子への変換であった。アセチレンジエステルとのDiels-Alder反応および生成したシクロヘキサジエン骨格の芳香族化反応は効率良く進行することを明らかにできた。また、不均一系触媒としてのPd/iO-braneの有効性、および2つのピレン骨格をもつ交差共役化合物の立体配座の溶媒依存性などの有益な結果を得ることができた。現在、これらの成果に基づいて数報の論文を執筆中である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、26年度の成果に基づいて、2,3-ブタジエニレン([2]デンドラレン)骨格の変換を中心に検討を進めていく。26年度においてベンザインをジエノフィルとしたDiels-Alder反応の予備実験を実施したが、満足する結果は得られなかったので、引き続き実験を行っていく。本研究の重要課題である常法では合成困難な主鎖骨格を含む多彩な高分子の合成を27年度も検討していく。合わせて、グリーンケミストリを指向した不均一系Pd触媒を用いた重合による交差共役高分子の合成を検討していく。26年度の検討でPd/iO-braneが有効であることが示唆されたので、この膜触媒を中心に他の不均一系Pd触媒の検討も合わせて実施していく予定である。
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Causes of Carryover |
物品購入等の要求総額(見積もり総額)は約178万円であり、ほぼ予定額の180万円と同額であった。しかし、要求額に比べて契約額が大きく下回った物品があったこと、および年末から年度末の間に購入要求した物品のうち幾つかが在庫切れ等で年度内に納品できないため購入できなかったことが原因である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
残額として約20万円が生じた。この使用については、基本的には試薬およびガラス器具等の消耗品の購入に充てる予定である。消耗品の購入金額の状況を鑑みながら、エバポレーター用の冷却水循環器の購入、現有物品で動作が安定していない乾燥機およびデシケーターの購入を考えていく予定である。
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Research Products
(11 results)