2015 Fiscal Year Research-status Report
組成制御したAu-Irアロイナノクラスターの合成と分光及び電気化学特性評価
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26410147
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
宮林 恵子 静岡大学, 工学部, 准教授 (50422663)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | クラスター / Au-Ir / 組成制御 / 質量分析 / X線光電子分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
原子数レベルで緻密に制御された新規Au-Irアロイクラスターを合成し、分光および電気化学的特性を評価することで、クラスターの組成制御により近赤外領域に吸収を有する新規光ナノ材料の開発を目的とし、平成27年度は、複合化するIr数の異なるAu-Irアロイクラスターの合成法の開発とキャラクタリゼーションを実施した。 平成26年度に開発した調整法を元に、Au/Ir前駆体比率を変えることでAu-Irアロイクラスターに含まれるIr原子数の異なるクラスターを調製した。調製したクラスターを、マトリックス支援レーザー脱離イオン化フーリエ変換イオンサイクロトロン質量分析法(MALDI FT-ICR MS)で評価した結果、前駆体比率がAu/Ir=24/1ではIr原子が最大2つまで含まれるクラスター由来のピークを観測した。前駆体をAu/Ir=1/0.9までIr比率を増加させたところ、Ir原子が最大5つまで含まれるクラスター由来のピークが認められ、複合化するIr数の異なるAu-Irアロイクラスターの合成を達成した。前駆体のIr比率をさらに増加させてもIr原子が6以上複合化されたクラスターは認められなかった。 調製したAu-Irアロイクラスターは、MALDI FT-ICR MSで組成評価し、X線光電子分光測定により電子状態を評価した結果、Ir比率の向上に伴いAu4f由来のピークが低結合エネルギー側へのシフトが認められ、AuとIrの複合化を確認した。Ir前駆体比率の増加に伴い、Ir-S由来のピークが認められたことや、質量スペクトルのフラグメントピークからクラスター内のIr原子の位置についてステイプル部に存在する可能性を示す実験データを得た。 複合化するIr原子数の異なるAu-Irアロイクラスターの合成法を開発し、そのキャラクタリゼーションを実施し平成27年度の目標を達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複合化するIr数の異なるAu-Irアロイクラスターの合成については、調製時のAu/Ir前駆体モル比率を24/1~2/3で変えて合成した。合成したクラスターをマトリックス脱離イオン化フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析法で評価した結果、Au(25-x)Irx由来のピークを確認しAu-Irアロイクラスターが合成できていることを確認した。複合化するIr数を評価した結果、前駆体比率がAu/Ir=24/1では複合化するIr原子数は2までであったが、It前駆体比率をAu/Ir=1/0.9まで比率を増加させることで、複合化するIr原子数が5まで増加することを確認し、Ir数の異なるAu-Irアロイクラスターの合成を達成した。さらにIr比率を向上させても複合化するIr原子数の増加は認められなかった。バルクではAuとIrは混和しないがクラスター化することでIrが約20%まで合金化することを明らかにした。 調製したAu/Ir比率の異なるクラスターにおいてX線光電子分光測定(XPS)を行い、Ir比率の増加に伴い、Au 4f由来のピークは低結合エネルギー側にシフトし、Ir 4f由来のピークは高結合エネルギー側にシフトし、合金化していることを質量分析に加えXPSにおいても確認した。XPS測定では、AuS由来のピークに加え、IrS由来のピークが求められた。Au-Irクラスターの質量スペクトルには、Auのみのクラスターには認められないS原子が13原子含まれるフラグメントピークが検出され、クラスター中のステイプル部位にIr原子が存在する可能性を示唆する実験データを確認している。これより概ね順調に進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度に合成した複合化したIr原子数の異なるAuIrクラスターについて微分パルスボルタモグラムにより、クラスターのHOMO-LUMOバンドギャップの評価を行う。まず、基準となるAuクラスターにおいて微分パルスボルタモグラムを測定した後、同条件での測定を検討する。溶媒にはアセトニトリル、電解質としては過塩素酸テトラブチルアンモニウム、参照電極には非水系Ag/AgClを使用する。微分パルスボルタモグラムによるHOMO-LUMO測定の成功の鍵は、Au(25-x)Irxアロイクラスターの純度にある。カラムクロマトグラフィーによる分離精製が不十分な場合は、電気泳移動によるAu(25-x)Irxアロイクラスターの分離を検討する。本調製法で得られる粗生成物に含まれる不純物としては、Au25クラスターが考えられる。これまでの検討によりAu25ナノクラスターと比較し、Au(25-x)Irxアロイクラスターは電子不足のため負イオンになりやすいことを質量分析において確認している。 一連のAu-Irアロイクラスターについて、キャラクタリゼーションと分光及び電気化学的特性評価結果を統合した議論を積み上げ、組成と光・電子特性の相関を評価することで、Au-Irアロイクラスターの組成と光・電子特性の相関を明らかにする。
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Causes of Carryover |
論文投稿を予定しており、その英文校閲料金、投稿料を計上していたが一部データの不足があり、再測定の後に投稿することになったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度投稿する際に、英文校閲料金、投稿料として使用する。
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