2014 Fiscal Year Research-status Report
分離分析を活用する副反応進行下での平衡反応解析法の確立
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26410154
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
高柳 俊夫 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 教授 (50263554)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
薮谷 智規 愛媛大学, 社会連携推進機構 紙産業イノベーションセンター, 教授 (80335786)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | キャピラリーゾーン電気泳動 / 速度論反応 / 酸解離定数 / ヘキサメチレンテトラミン / プラバスタチン / トリフェニルメタン系陽イオン染料 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,水溶液一相系で分離分析を行うキャピラリーゾーン電気泳動法(CZE)を用いて,速度論反応等の副反応の進行下での平衡反応解析法を確立することを研究目的とした.分離分析であるCZEでは,数分~数十分の測定時間と比較して遅い反応速度を有する物質(分解生成物など)は測定対象となる物質から分離されるので,分解生成物の影響を排除して測定対象物質の挙動を測定する点を特徴とした研究である. 比較的遅い反応速度を有する反応系を対象とした研究として,本年度は,酸性領域で比較的迅速に分解するヘキサメチレンテトラミンの酸解離定数の決定,酸性領域で比較的遅い分解性を有する薬物であるプラバスタチンの酸解離定数の測定を行った.ヘキサメチレンテトラミン,プラバスタチンとも酸解離平衡は迅速な反応であり,CZEによる電気泳動移動度の測定では,プロトン付加体とプロトン解離体の加重平均の電気泳動移動度として測定される.分解生成物が存在する系において,ヘキサメチレンテトラミン,プラバスタチンについて分解生成物の影響を受けることなく酸解離定数を決定することができた. また,対象とする酸解離反応自体が遅い反応である反応系の例として,マカライトグリーンをはじめとする3種類のトリフェニルメタン系陽イオン染料(R+)の酸解離定数を決定した.これら陽イオン染料へのOH-の付加反応は酸解離反応と等価であるが,この付加反応は比較的遅く,平衡到達までに数時間から数日を要する.平衡到達後にCZE測定を行うとR+とROHとが分離され,R+の定量結果から酸解離定数を決定することができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヘキサメチレンテトラミンは酸性領域で比較的迅速にホルムアルデヒドとアンモニアに分解するので,分解生成物による測定の妨害,分解による測定対象物質量の甚だしい減少のため,従来の測定・解析法である電位差滴定法等では酸解離定数を決定することはこれまで不可能であった.CZEの分離分析を活用することにより分解性生物はCZE分離され,分解生成物の妨害を受けることなく,平衡化学種の電気泳動移動度の測定を通してヘキサメチレンテトラミンの酸解離定数を決定できた初めての研究であり,本研究の特長であるCZEの手法を活用した具体例である. また,プラバスタチンは酸性溶液中で分解し,その分解反応速度が比較的遅いので分解生成物の影響を受けることなく酸解離定数を決定することも可能であるが,分解生成物が共存する系での酸解離定数の決定例として検討を行った.分解反応によりプラバスタチンのCZEシグナルは減少したが,分解生成物の影響を受けることなく目的物質の電気泳動移動殿測定を通して酸解離定数を決定することができた.また,分解生成物は無電荷であり,ミセル動電クロマトグラフィーにより分解生成物のCZEシグナルを検出した. トリフェニルメタン系陽イオン染料としてマラカイトグリーン,ブリリアントグリーン,パラローザニリンを用い,OH-付加反応に基づく酸解離平衡の解析を行った.陽イオン染料(R+)へのOH-付加反応は比較的遅い反応であり(反応生成物:ROH),平衡到達までにマラカイトグリーンで数時間程度,ブリリアントグリーンで1日程度を要する.溶液のpHを調整後,恒温下で1日~4日静置して平衡化した後に,CZE測定するとR+とROHはそれぞれ個別の物質として検出された.pH変化に伴うR+の定量結果から,水素イオン濃度に対して1次の酸解離定数を決定することができた. また,本研究に関する一連の成果として,分析化学誌に総合論文を執筆する機会を得た.
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Strategy for Future Research Activity |
ヘキサメチレンテトラミンはプロトン付加が可能な3級アミン部位を4箇所有しており,本測定で得られた酸解離定数が1段階のプロトン付加に対応するものなのか,多段階なのかの決定に至っていない.ヘキサメチレンテトラミンの3級アミン部位をエチル化していくつかの第4級アンモニウムイオンを準備し,それらの電気泳動移動度の測定からプロトン解離の段階数を決定する. また,易分解性物質の酸解離平衡の解析に関して,解析結果の蓄積を続ける.易分解性の医薬品に加えて,易分解性を意図したプロドラックを含めて検討を進める. さらに,比較的遅い反応速度の分解反応として,エステル基の加水分解反応を例としてとりあげ,加水分解反応進行下での酸解離定数の決定を進める.加水分解反応は酸性,アルカリ性条件化で進行し,酸解離反応も特定のpH条件下で進行する.エステル基の加水分解pH領域と酸解離平衡のpH領域とが重なる反応系・反応物質を選び,検討を進める. 化学的な加水分解反応から,酵素反応における加水分解反応へと研究の展開を図る.
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Causes of Carryover |
備品である紫外可視分光光度計の購入がメーカーのキャンペーン期間中であり,比較的安価で購入できたため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は測定装置のランプを交換しなかったため,次年度には3台の測定装置のランプ交換が必要となる.その他消耗品も含めた購入資金として使用する予定である.
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Research Products
(12 results)