Outline of Annual Research Achievements |
1 μm以下の大気粉塵(PM1.0)のリアルタイムモニタリングを2014年10月23日から30日まで、5分間隔に1週間連続して行った。昼間と夜間を比較すると、人間活動により、大気粉塵は昼間の方が夜間よりも多いことが判明した。元素濃度は風向に応じて大きく変化した。その時間変化の傾向から元素を4つのグループに分けることができた。Group 1: Al, Ti, Feの起源は土壌だと考えられる。Group 2: Cu, Se, Cdは焼却場から発生する焼却飛灰が起源だと考えられる。Group 3: V, Niは重油の燃焼が起源だと考えられる。Group 4: As, Sbは揮発性元素として同一の挙動を示した。原因はまだ明らかでないが、昼間と夜間の風向に対する元素の変化は大きく異なった特徴を示した。
これらの実験結果は2015年2月にドイツ ミュンスターで開催された2015 European Winter Conference on Plasma Spectrochemistryで口頭発表を行った。
発表タイトル”Quantification of multi-elements in airborne particulate matter by real-time monitoring ICP-MS and their correlation with wind direction and velocity”
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中央大学理工学部屋上から地上1階の研究室まで、80 mのタイゴンチューブを設置し、インパクターを通し粒径< 1.0 μmの大気粉塵(PM1.0)と粒径< 2.5 μmの大気粉塵(PM2.5)を選択し、ダイアフラムポンプを用いて1 L/minで吸引した。吸引した大気を2つに分岐し、0.25 L/minはガス交換器に通して大気粉塵を損なうことなく、空気をアルゴンに変換し、大気粉塵をICPMSに直接導入した。大気粉塵中の多元素を脱溶媒装置付属の超音波ネブライザーを用いて定量した(リアルタイムデータ)。残りの0.75 L/minは、0.025 μmのフィルターに通し大気粉塵をフィルター上に捕集し、フィルターごと大気粉塵を酸分解し、大気粉塵中元素を定量した(フィルター捕集データ)。
PM2.5中のPbに対してリアルタイムデータとフィルター捕集データを比較した結果、両者が一致することを確認した。PM1.0中の多元素についてもリアルタイムデータとフィルター捕集データを比較してみたが、V, Sb 及びPbについては良い一致を示したが、Ti, Ni及びZnは一致せず、PM1.0でもプラズマ内で完全に気化・イオン化されていないと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
PM1.0の大気粉塵をICPMSに直接導入し、多元素(Na, Mg, Al, K, Ca, Fe, Ti, V, Cr, Mn, Co, Ni, Cu, Zn, As, Se, Mo, Cd, Sb, Ba, Pb)のリアルタイムモニタリングを春(4月)夏(8月)秋(9月)冬(12月)に実施する。昼間と夜間の時間変化、季節変動、気象要素(風向、風速、降雨など)との相関を見ることにより、ナノスケールの大気粉塵の起源を明らかにする。本研究室で1995年度より2013年度まで1ヶ月に1回の頻度で18年間継続してきた粒径別大気粉塵中の主成分元素及び微量元素濃度の長期モニタリングの結果と比較し、時々刻々と変化する多元素の挙動を捕らえることのできるリアルタイムモニタリングの利点を明らかにする。大気粉塵中の融点が高い元素(Zn, Co, Mn, Ti, Ni, Ba, Al, Ca, Mg)の酸化物がICP中で完全に気化・イオン化されないことを補正するため、リアルタイムデータとフィルター捕集データから元素の回収率を求め、リアルタイムモニタリングの結果を得た後に、回収率補正を行う必要がある。
この実験結果は2015年12月ハワイ ホノルルで開催されるPacifichem 2015 (The International Chemical Congress of Pacific Basin Societies)で口頭発表を行う予定である。 発表タイトル“Real time monitoring of multi-elements concentration in airborne nano-particles (ANPs) by direct introduction into ICPMS”
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