2014 Fiscal Year Research-status Report
便中有機酸メタボロミクスによる腸内細菌叢の機能解析法の開発
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26410161
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
小谷 明 東京薬科大学, 薬学部, 准教授 (40318184)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 有機酸 / 電気分析化学 / 液体クロマトグラフィー / 糞便 / メタボロミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
腸内細菌叢の生体内における機能の詳細を明らかにし、これを創薬の材料や新しい治療法の確立へ展開するには、腸内細菌叢の代謝物である便中有機酸を指標にしたメタボローム分析が必要不可欠である。本研究では、キノンの還元前置波による酸定量法を活用し、便中有機酸のメタボローム分析を実践するための新規計測システムを開発する。本計測システムが便中有機酸メタボローム分析において実用性に優れ、腸内細菌叢の機能を的確に把握できる分析法であることを示すために、ヒトや実験動物の便を試料とした応用研究も実施する。 本年度は、多種類の有機酸を一斉分析できる計測システムの開発を行った。まず、測定対象の有機酸の分析に適した分離モードを選択するために、逆相、イオン排除、あるいは親水性相互作用クロマトグラフィーについて検討した。各有機酸の良好な分離分析を比較的短時間に達成できる点から、イオン排除クロマトグラフィーを選定した。検出部には、キノンの還元前置波に基づく酸測定法を組み込み、有機酸の特異的な検出に有用であることを明らかにした。糞便を試料とした分析を電気化学検出へ適用する場合、検出の場である電極界面の汚染による精度と感度の低下が危惧される。そこで、安定な電極界面を維持できる測定条件および糞便試料の前処理方法を精査した。以上のような最適化の後に、本計測システムの分析能パラメータを評価したところ、本法は有機酸を定量する上で充分な感度、特異性、定量範囲、精度を有することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、当初計画していた便中有機酸のメタボローム分析のための新規計測システムとして、キノンの還元前置波を利用した酸定量に基づく電気化学分析法の開発に成功した。開発に際し、分離分析および検出の条件検討、前処理操作等の選定を入念に行った。その結果、数週間メンテナンス不要で計測可能な分析システムとして確立し、頑健性に優れることを示した。平成27年度以降、本計測システムを用いて多検体の分析を実施する計画がある。従って、安定した測定を供することができる分析システムの開発は、本研究成功の鍵となる成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度以降は、当初の計画通り、平成26年度に開発した計測システムを用いた応用研究を行い、腸内細菌叢の機能解析を実践する。特に、漢方薬、健康食品が腸内細菌叢へ及ぼす詳細な影響は不明な点が多いため、これらを取り扱った応用研究を行う。 1) 腸内細菌叢の生物活性変化における抗生物質及び漢方薬の影響 陳皮や生姜を含む漢方薬は、抗生物質により低下した免疫機能を回復する目的で投与される。これらの漢方薬が腸内細菌叢へ影響を及ぼすことは示唆されているが、詳細な作用機序に関しては不明な点が多い。本計測システムを用いて、便中有機酸、血中および便中薬物の動態分析を実施し、漢方薬と抗生物質が及ぼす腸内細菌叢の生物活性変化を便中有機酸のメタボローム分析で追跡できることを明らかにする。 2) 食事内容あるいは健康食品が腸内細菌叢へ及ぼす影響 健康食品は腸内細菌叢へ直接的に影響を及ぼすことは示唆されているが、その詳細については不明な点が多い。本研究では、まず、日常的な食事内容が腸内細菌叢へ及ぼす影響について、便中有機酸のメタボローム分析を実施する。健常人に対して、毎食の食事内容の調査とともに便中有機酸の時間-濃度プロファイルを取得する。さらに、健康食品(機能性ヨーグルトなど)を摂取した場合についても同様な検討を行う。両者のデータの対比により食事内容と便中有機酸の関連性及び良好な生理的効果が現れていることを、便中有機酸のメタボローム分析で追跡できることを明らかにする。
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Research Products
(4 results)