2015 Fiscal Year Research-status Report
マイクロ流体における特異的液-液界面創出現象の解明と新規分析システムへの応用
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26410165
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
塚越 一彦 同志社大学, 理工学部, 教授 (60227361)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 相分離混相流 / マイクロ流体 / 液液界面 / 管径方向分配流 / 二相分離混合溶液 |
Outline of Annual Research Achievements |
従来の微小空間内の流れを、便宜上、均一一相流(液液界面を持たない)と混相流(液液界面を持つ)に分類すると、均一一相流としては電気浸透流と狭義の層流が挙げられ、混相流としては「非混和混相流」(水-疎水性有機溶媒混合系)が知られている。我々は、微小空間内に新しい混相流の流れ、「相分離混相流」、を見出し、そのメカニズムの解明と化学技術への応用に取り組んだ。「相分離混相流」は、二相分離混合溶液を、微小空間内に送液し、温度/圧力変化で、混合溶液が、一相から二相へ相変化することによって得られる。二相分離混合溶液としては、我々が新しく見出した水-親水性/疎水性有機溶媒混合溶液をはじめ、従来から知られている水-界面活性剤混合溶液、水-イオン液体混合溶液、フルオロカーボン/ハイドロカーボン有機溶媒混合溶液等が使用された。我々は、「相分離混相流」を、流れ特性(慣性力、粘性力等)、無次元数(ウエバー数、レイノルズ数等)、粘性散逸法則等の流体力学の視点から解明した。さらに、TRDF(管径方向分配流)における内側相と外側相とのパターン配置について、粘性散逸法則から考察した。粘性散逸法則に基づけば、二相混相流の環状流は、粘性散逸エネルギーが小さい相配置パターンで流れる。それぞれのTRDFにおいて、粘性散逸エネルギーを計算して、実際に観測されるTRDFの相配置パターンを考察した。TRDFでの内側と外側の相配置は、粘性散逸法則と二相混相流の線形安定性解析[2]の結果から説明できることがわかった。相配置は、流体エネルギーが小さくなるように、すなわち、流れの安定性が増すように生じる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新しいマイクロ流体現象について、そのメカニズムを解明してきた。また学術論文レベルでの応用例も示してきた。しかしながら、実試料への応用分析は達成されていない。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究を通して3つの新しい研究対象が見えてきた。1)従来の水-親水性有機溶媒混合溶液、親水性/疎水性有機溶媒混合溶液に対して、「水-親水性/疎水性有機溶媒混合溶液の科学」、2)従来の非混和混相流に対して、「動的液液界面の新規創出方法としての相分離混相流」、3)今まで報告例がない「流れ学の常識を覆すマイクロ空間環状流」。それぞれの研究対象は、基礎科学から工学まで、また基礎研究から応用・展開研究まで、幅広い領域におよぶ。3つの研究対象は、互いに独立している一方、関連性を有することもある。マイクロ空間領域でその関連性が大きくなる。既存の知識、技術に、3つのオリジナル研究の成果を、相互に組み合わせ、過去の研究の延長上にはない新しい「マイクロ流体システム」を構築することを今後の課題と考える。
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