2014 Fiscal Year Research-status Report
ペプチド・タンパクへの選択性に焦点を当てたフルオラス・分析化学の新機軸
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26410166
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
能田 均 福岡大学, 薬学部, 教授 (20164668)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 分析化学 / フルオラスケミストリー / 誘導体化 / 液体クロマトグラフィー / 金属キレートアフィニティー / 溶媒・固相抽出 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、パーフルオロアルキル鎖同士による特異的親和性(フルオラス相互作用)を利用し、ある特定のペプチド・タンパクのみを極めて選択的な分析する方法の開発を行っている。 本年度は、先ず、先行研究にて開発した「フルオラス誘導体化法」を、分子内ジスルフィド結合を有するペプチド(バソプレシン及びオキシトシン)を対象とした分析に応用した。具体的には、これらペプチド類のジスルフィド結合を還元剤にて切断し、パーフルオロアルキルヨードアセトアミド試薬によって多重にラベル化した。本誘導体の構造をMSスキャン測定にて確認したところ、目的のパーフルオロアルキル化体が生成されており、また、それらは期待通りフルオラスLCカラムにて選択的に保持・分離された。また本法では誘導体の定量分析に、MS/MSによるMRM測定ではなく、より選択的かつ高感度な検出が可能なMS/MS/MSによる測定を行った。 さらに、リン酸化ペプチド類の選択的抽出法として汎用的に利用される金属キレートアフィニティー法に、フルオラスの相互作用を組み合わせた方法の開発を試みた。本研究では先ず、金属キレート能を持つフルオラス試薬として、パーフルオロアルキルイミノ二酢酸(PFIDA)の合成を行った。さらに、合成したPFIDAに種々の金属類を配位させ、それによるモデルペプチドの金属キレートアフィニティー/フルオラス抽出を行った。本法において、フルオラス溶媒を用いた液液抽出を行ったところ、モデルとしたペプチドのリン酸化体はフルオラス溶媒中に抽出することができたが、非リン酸化体は抽出されなかった。また、フルオラス溶媒中に抽出されたリン酸化ペプチドは、脱キレート用のアンモニア溶液の添加によって容易に逆抽出することが可能であり、その後のHPLC分析を容易に行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績に記載のとおり、本年度は、フルオラス相互作用を利用し、特定のペプチドのみを選択的に分析あるいは抽出するための基礎的な検討を行った。今回、開発に着手したいずれの方法も、標準品試料への適用による原理確認に留まっており、方法論として確立するための基礎的条件検討の余地は残されてはいるものの、それらの有用性について確信できる結果は得られたものと考えている。従って、本研究は特に問題はなく、順調に進展しているものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本研究をさらに進展させるべく、開発した各方法の詳細な条件検討を行い、それらの基盤を整備する。フルオラス誘導体化法については、誘導体化のための反応条件(試薬濃度、反応温度及び時間など)を確立させるとともに、得られた誘導体のフルオラスLCによる分離並びにMS/MS/MSによる測定条件を整える。その後、実試料へと適用し、その有用性を評価する。金属キレートアフィニティー/フルオラス抽出法については、金属種毎の抽出条件の最適化や、液液のみならず固相抽出による条件を整えた後、こちらも実試料へと適用し、その有用性評価について詳細な検討を行うこととする。
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Causes of Carryover |
今年度は、本研究において開発している各方法についての原理確認に関する実験を主に行っていた。そのため、実験に使用した試薬類も比較的少量であり、標準試料を利用した検討を中心に行っていた。そのため、研究費の使途も限られたものであった。次年度からは、今年度中に確認した方法をもとに詳細な条件検討を行った後、その方法を実試料測定へと随時応用していく予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の研究費の具体的な用途としては、今年度と同様、標準品類のみならず、基礎的検討に必要な試薬類、HPLC分析用消耗品類、抽出用器具類の他、実試料などの調製に必要な試薬や器具類などの購入費であり、それらに研究費の大半を使用する予定である。その他、学会や研究会参加のための旅費、論文投稿の際の英文校閲費や投稿費などに使用する。研究費の内訳に変動が生じた場合は、消耗品費で調整することとする。
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Research Products
(17 results)