2015 Fiscal Year Research-status Report
含ケイ素高輝度蛍光剤を活用した蛍光応答型高精度ゲノム解析プローブの開発
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26410173
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
篠塚 和夫 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (20206105)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 裕介 群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (90304302)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 蛍光性オリゴDNA / シリル化ピレン / シリル化ペリレン / 一塩基ミスマッチ |
Outline of Annual Research Achievements |
① ケイ素原子に2つのイソプロピル基又は2つのフェニル基が結合した、新規なシリル化ピレン誘導体を合成した。イソプロピル基が結合したシリル化ピレン誘導体の蛍光特性は、対応するこれまでに開発した2つのメチル基を持つシリル化ピレン誘導体と大きな相違は見られなかった。一方、フェニル基が結合したシリル化ピレン誘導体では、アルキル基が結合した他のシリル化ピレン誘導体の蛍光量子収率が、未修飾ピレンの約2倍に留まったのに対し、約2.7倍と大きく向上する事が判明した。 これらの新規シリル化ピレンはホスホロアミダイト体へと誘導した後、オリゴDNAの5'-末端に導入した。イソプロピル基を持つシリル化ピレン修飾オリゴDNAの蛍光シグナル変化に関しては、メチル基を持つ修飾オリゴと大きな相違は見られなかったが、フェニル基を持つシリル化ピレン修飾オリゴでは、完全相補鎖存在時の蛍光強度が、修飾オリゴ単独の場合に比べ約20~40倍に増大し、さらにこのような変化が目視によっても確認出来るなど、プローブとしての性能向上が見られた。 ② ヒトパピロマウイルス遺伝子診断用プローブとして、C-5アントラキノン結合デオキシウリジン残基及びC-5シリル化ペリレン結合デオキシウリジン残基を併せ持つモレキュラービーコンプローブを作製し、強毒型パピロマウイルス遺伝子に対応するオリゴDNAとの二重鎖形成と蛍光シグナル変化について研究した。その結果、作製したプローブは標的DNA存在下でのみ蛍光シグナルを発する事を確認した。
これらの成果の一部は査読付き論文として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は新たな構造を持つ新規なシリル化ピレン誘導体を開発し、更にその蛍光特性を研究する中で、ケイ素原子の置換基としてフェニル基を用いる事で蛍光量子収率を更に向上させる事が出来ると言う新知見を得た。また、得られた新規シリル化ピレンを5-末端に結合した修飾DNAでは、完全相補鎖存在時の蛍光強度が、修飾オリゴ単独の場合に比べ約20~40倍に増大し、さらにこのような変化が目視によっても確認出来るなど、プローブとしての性能向上が見られることを明らかに出来た。これらの新たな知見は、当初目指して来た、ダンベル型高次構造を持つ実用的なDNAプローブの開発に寄与する結果と言える。これらの結果の一部は、査読付き論文として発表する事ができた。 また、当初は28年度実施予定であった、ヒトパピロマウイルス遺伝子診断プローブの開発に向けた実験を、27年度に前倒しで実施する事が出来た。実験の結果、作製したプローブは標的DNA存在下でのみ蛍光シグナルを発する事を確認することができた。 一方、エキシマー発光を利用するシリル化ピレン結合DNAプローブの開発に付いては、その合成原料となる、クリック反応に適用可能な、アジド基を持つシリル化ピレン誘導体の合成に成功したものの、その収率には問題が有り、これを用いたDNA合成には至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度は当初計画に従い、これまでの成果を基に、子宮頸ガンの原因となるヒトパピロマウイルスの遺伝子診断プローブの開発を実施する。特に、一塩基変異により様々な亜型が存在し、それによってガン発症リスクに違いが有るパピロマウイルスについて、リスクの高い2種類の亜型の正確な検出が可能なプローブの開発を目指す。 エキシマー発光を利用するシリル化ピレン結合DNAプローブに付いては、アジド基を持つシリル化ピレン誘導体合成の条件を詳しく検討する事で、その効率的な合成法の確立を目指すことと、これを用いたプローブの合成及びその蛍光特性の研究を進める。 更に可能であれば、シリル化ピレン結合DNAプローブの、TacMan酵素を用いたリアルタイムPCRに適用可能なプローブとしての開発も目指す。
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