2015 Fiscal Year Research-status Report
アミノグリコシド抗生物質の構造多様性の鍵を握るラジカルSAM酵素の精密反応解析
Project/Area Number |
26410174
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
工藤 史貴 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (00361783)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | アミノグリコシド抗生物質 / アプラマイシン / イスタマイシン / ネオマイシン / ラジカルSAM酵素 / 生合成 / 修飾酵素 / 天然物化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、アミノグリコシド抗生物質の耐性菌に有効なC3’位デオキシ化に関わるラジカルS-アデノシルメチオニン(SAM)酵素の機能解析を集中して行った。昨年度までに、アプラマイシン生合成遺伝子クラスターにコードされるラジカルSAM酵素AprD4とNADPH依存の還元酵素AprD3を共存させ、生合成中間体の一つであるパロマミンと反応させた時に生成物が生じることがわかったので、今年度はスケールをあげて酵素反応を行い、パロマミンのC3’位がデオキシ化されたリビダミンが生じたことをNMRなど各種スペクトルにより明らかにした。また、重水を用いて調製した緩衝液中で酵素反応を行うとC3’エクアトリアル位に重水素が取り込まれることがわかった。 イスタマイシン生合成に関しては、生合成遺伝子クラスター中のラジカルSAM酵素IstL, IstL2, IstL3の機能解明に向けて、推定基質の酵素合成に着手した。結果、グルコース-6-リン酸から2-デオキシ-scyllo-イノサミン(DOIA)へと至る生合成酵素の機能解明に成功した。しかしながら、DOIAをグリコシル化する可能性のある酵素や、酸化してジアミノサイクリトールへと変換する酵素の活性を見出すことができなかった。このことから、DOIAを基質とする酵素としてIstL, IstL2, IstL3が関わる可能性が浮上した。 ネオマイシン生合成におけるラジカルSAMエピメリ化酵素NeoNに関しては、さらなる詳細な反応機構解明を目指し、結晶構造解析を検討することにした。しかしながら、現有の設備では大規模スクリーニングを行うことが困難で、検討した条件では結晶すら観測できなかった。幸いUniversity of SouthamptonのPeter L. Roach教授に構造解析に興味を持っていただいたので、最終年度に共同研究を行う予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アプラマイシン生合成におけるC3’位デオキシ化に関わるラジカルSAM酵素の機能解明に関しては、還元酵素と組合せることで生成物の構造をはっきりさせることができた。また。今後の基質特異性の検討につながる反応条件を見出すことができた。 イスタマイシン生合成に関しては、期待した推定基質の調製には至らなかったが、生合成の初期段階でラジカルSAM酵素が関与する可能性を見出すことができた。今後、それを明らかにしていく予定である。 ネオマイシン生合成におけるラジカルSAMエピメリ化酵素NeoNに関しては、現有設備での結晶化が困難であることが判明したが、ラジカルSAM酵素など酸素に対して極めて敏感なタンパク質の結晶構造解析で顕著な業績を上げているPeter L. Roach教授との共同研究を開始することができた。 また今年度は、これまでのアミノグリコシド抗生物質の生合成研究を総括し、Chemical Record誌にパーソナルアカウントとして報告することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
アプラマイシン生合成におけるC3’位デオキシ化に関わるラジカルSAM酵素AprD4の機能解明に関しては、パロマミンの脱水化体を直接検出することができていないので、それを還元する酵素反応時に重水素化NADPHを用いることで、間接的にその存在を証明する。また、AprD4のいくつかの変異体は既に構築したが、酵素反応解析には至っておらず、ラジカル反応中間体の水素化機構に関わるアミノ酸残基を特定する。また、ラジカル反応中間体をEPRにより検出することを試み、ラジカル反応機構を明らかにする。 イスタマイシン生合成におけるラジカルSAM酵素に関しては、DOIAを基質とする脱水素化に関わるかどうか検討する。その後のアミノ化反応を触媒すると推定している酵素とカップリングさせることで、イスタマイシンに特異な1,4-ジアミノサイクリトール形成機構を明らかにする。 これら3つのアミノグリコシド抗生物質の生合成におけるラジカルSAM酵素の機能をまとめ、アミノグリコシド抗生物質の構造多様化機構に関するさらなる研究への展開を図る。
|
Causes of Carryover |
H28年度には、英国の研究グループとアミノグリコシド抗生物質の生合成におけるラジカルSAM酵素の構造解析に関して共同研究を行う予定であり、その旅費や実験試料の調製費用を確保するため繰り越した。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
英国の研究グループとアミノグリコシド抗生物質の生合成におけるラジカルSAM酵素の構造解析に関して共同研究を行うための外国旅費や実験試料の調製費用として使用予定。
|
Research Products
(2 results)