2014 Fiscal Year Research-status Report
光ナノ複合材料による健康阻害ガスセンサに関する研究
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26410201
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
安藤 昌儀 独立行政法人産業技術総合研究所, 健康工学研究部門, 上級主任研究員 (20356398)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
茂里 康 独立行政法人産業技術総合研究所, 健康工学研究部門, 総括研究主幹 (90357187)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 健康阻害ガス / 光学式ガスセンサ / オゾン / 光ナノ複合材料 / 蛍光 / 光吸収 |
Outline of Annual Research Achievements |
健康阻害ガスは、事故や災害時の他、気密性が増した省エネ型建物内等で高濃度化の危険がある。オゾンは、強力な酸化力と、分解すれば無毒になるという後処理の容易さが応用上の利点として注目され、高濃度域(5~8%)で半導体産業における有機物除去や洗浄、中濃度域(200ppm程度)で病院や医薬品製造施設での殺菌・脱臭、低濃度域(0.01~数ppm)でクリーンルーム等建物内空間や水の殺菌・脱臭、食品・畜産業等に利用が広がっている。また成層圏のオゾン層は太陽からの紫外線吸収を吸収し、地上の生物を守っている。 しかし、オゾンは有用な反面、大気中約1ppm以上で目や呼吸器、神経等の中毒症状を引き起こし、50ppmを超えると生命の危険が生じ、1000ppm以上では短時間で死亡する。光化学オキシダントの主成分ともなる。近年、一般向けに脱臭用小型オゾン発生装置が市販されているが、狭い室内空間で使用すると、作業環境許容濃度0.1ppmを超過し得る。オゾンはコピー機や電気モーターからも発生する。そのためオゾンセンサの必要性が増している。従来のセンサは電気式と紫外線吸収式が主であった。光学式は電気式と異なり電気火花発生の危険がなく、遠隔非接触操作ができる。しかし、オゾンの紫外吸収を直接測定する従来法では、低濃度域では長いガスセルと高価な光学検出系を要した。本研究では蛍光や光吸収がオゾンに感応する光ナノ複合材料を研究し、小型で安価な光学式健康阻害ガスセンサの基盤技術開発を目指す。 平成26年度は、0.1~500ppmの範囲で濃度制御したオゾンを含む空気を、光ナノ複合材料を格納したガス流通光学セルに流すシステム、ならびに、オゾン濃度を変化させた時に、光ナノ複合材料の蛍光強度とスペクトルの変化を高速測定できるシステムを構築した。これらの実験システムの動作確認を完了し、ナノ複合材料の試作を予備的に進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
0.1~500ppmの範囲で濃度制御されたオゾンを含む空気を、光ナノ複合材料を格納したガス流通光学セルに、流量を毎分30~200mLの範囲で制御して流す実験システムの構築と動作確認を順調に完了した。また、空気中のオゾン濃度を変化させた時に、光ナノ複合材料の蛍光強度と蛍光スペクトルの変化を可視波長域の全域で高速測定できる測定システムの構築と動作確認を順調に完了した。一方、カバーガラスを基板として作製したナノ複合材料試料を、ガス流通光学セルに格納した状態でセル内部のオゾン濃度を変化させた時に、試料の蛍光強度と蛍光スペクトルの変化をリアルタイムで高速測定可能であることを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
毒性・可燃性・爆発性等を有する種々の健康阻害ガスの中で、有用である反面、一定濃度以上では猛毒となるオゾンを光学的に検知可能なナノ複合材料の研究を中心として推進する。試作したナノ複合材料の光学的なオゾン応答性の中でも、光吸収変化よりもダイナミックレンジが広くセンサ応用への有用性が高いと考えられる蛍光発光の強度やスペクトルの応答性を重点的に調べる。オゾン濃度とナノ複合材料の蛍光発光変化の関係、空気中にオゾンを添加した時の蛍光の応答性、空気中からオゾンを除去した時の蛍光の応答性、再現性、耐久性等を調べ、各オゾン濃度域に適した試料作製への手掛かりを得ることを目指す。
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Causes of Carryover |
平成26年度は初年度であるので、目的とする実験システムの構築とナノ粒子複合材料の作製を無駄なく行うため、予備的な構築・試作を行い、システム構築方針と研究全体の方向性が的確であることを確認した。そのため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ナノ複合材料試作用の薬品や実験用品、光学式オゾンセンサ研究システムを稼動し拡充するための実験用品を購入する。オゾンに対する試料の光学特性変化を研究する上で、実験システムにおいてオゾン以外に共存する可能性のあるガスや湿分の影響を調べるための実験用品を購入する。また、ナノ複合材料に関する最先端の研究成果が発表される研究集会に参加し、本研究推進のための情報収集と成果発表を行う。
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Research Products
(1 results)