2015 Fiscal Year Research-status Report
光ナノ複合材料による健康阻害ガスセンサに関する研究
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26410201
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
安藤 昌儀 国立研究開発法人産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, 上級主任研究員 (20356398)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
茂里 康 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 健康工学研究部門, 総括研究主幹 (90357187)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 健康阻害ガス / 光学式ガスセンサ / オゾン / 光ナノ複合材料 / 蛍光 / 光吸収 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ガスとの接触時に光学特性(発光、吸収等)が可逆的に変化する光ナノ複合材料を用いて、健康阻害ガスであるオゾン等を検知可能な光学式ガスセンサの開発に取り組んでいる。オゾンは、強力な酸化力と、分解すれば無害になる後処理の容易さから、半導体産業における有機物除去、病院・医薬品製造施設・食品工場・オフィス・家屋における空気や水の殺菌・脱臭に幅広く利用されている。 しかし、オゾンは空気中約1ppm以上では人体への毒性が著しく高くなるので、オゾンセンサの必要性が増している。光学式ガスセンサは、電気式ガスセンサと比較して、電磁気的ノイズに強く、防爆性や遠隔非接触操作性に優れる。 平成27年度は、光ナノ複合材料として、蛍光強度が表面状態に敏感な量子ドット(化合物半導体ナノ粒子)を選び、研究を進めた。平成26年度に構築した実験システムを用い、空気中のオゾン濃度を変化させながら蛍光量子ドット薄膜の蛍光強度・スペクトルを測定した。その結果、セレン化カドミウム(CdSe)系のコアの表面に硫化亜鉛(ZnS)等のシェルを被覆した、コアシェル型量子ドットが、室温・大気圧下において、空気中のオゾンに感応して蛍光強度の減少を示し、オゾンを含まない空気中では可逆的に回復する現象を確認した。粒径が比較的大きく安定性の高い赤色発光量子ドットでは1~500ppmの広い濃度範囲のオゾンに対して可逆な応答を示し、蛍光強度変化量はオゾン濃度に依存した。一方、赤色発光体よりも粒径が小さく表面原子の比率が高い緑色発光量子ドットは高濃度オゾンに対しては応答の可逆性が低下したものの、低濃度オゾンに対しては可逆応答と高感度を示し、0.1ppmまでの感度を確認した。これより、CdSe系コアシェル型量子ドットが、蛍光を用いた光学式オゾンセンサ材料として有望であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に構築した実験システムが計画通り、順調に稼動し、このシステムを用いて光学式ガスセンサ材料の探索を実施することができた。その結果、本年度、セレン化カドミウム(CdSe)系のコアシェル型量子ドットの薄膜が、空気中の微量のオゾンに感応して、室温・大気圧下で可逆な蛍光強度変化を示すことを確認した。このように、光学式オゾンセンサ機能を発現する光ナノ複合材料としてCdSe系コアシェル型蛍光量子ドットが有望であることを見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
空気中のオゾンによる量子ドットの蛍光強度の変化量(感度)と減少速度、ならびに、雰囲気をオゾン不含空気に戻した際の蛍光強度の回復速度を高めることは、ガスセンサとして重要な課題である。今後は、蛍光量子ドットに、他の機能材料を複合する方法や、センサ駆動条件の最適化等によって、オゾンに対する感度と応答速度の向上を図る。また、光ナノ複合材料を用いて、オゾン以外の、毒性・可燃性・爆発性等を有する健康阻害ガスを検知する可能性を探る。
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Causes of Carryover |
平成26年度に構築した実験システムが平成27年度中に順調に稼動し、一連のオゾンセンサ材料探索実験およびオゾンセンサ特性測定・解析の中で大きなトラブルが発生しなかったため、実験システムを補修・維持するための費用がほとんどかからなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度に光学式オゾンセンサ材料としての有望な特性を見出した蛍光量子ドットをベースとして、他の機能材料を複合して感度と応答速度の向上を目指した実験を実施するための薬品や実験用品を購入する。また、オゾンセンサ材料探索の高効率化とセンサ特性解析の高度化を目指し、実験システムを改良するための実験用品を購入する。
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Research Products
(7 results)