2015 Fiscal Year Research-status Report
二酸化炭素光触媒還元電位・波長の制御と光燃料電池の援用および動的過程の分光追跡
Project/Area Number |
26410204
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
泉 康雄 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (50251666)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 光燃料電池 / 二酸化炭素 / 光燃料化 / 圧依存性 / 酸化チタン / 層状複水酸化物 / X線吸収微細構造 / 赤外分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
水を媒質とする、両極に光触媒を用いる太陽電池(光燃料電池)では動作原理に立ち返り、負極で水を光酸化して生じたO2がセル内で正極に移行し正極では光還元されて水に戻ることで、セルが独立して光をエネルギー源として発電することを示した。 さらに動作過程を明らかにするために、正極光触媒にバンドギャップが4.5 Vと大きいZrO2に銀を担持して用いたところ、セル当り1.9 Vの起電力を示したが、負極の励起電子が正極の銀に直接流れ込み、セル出力に余り寄与しない過程も併発することが明らかになった。一方、正極では酸化チタンを有機-水混合溶媒中で高分散後触媒層化した場合に、水光酸化の活性点数および触媒層の通電がよく、より小さな粒径によるものと考えられた。
CO2光燃料化では、まず反応速度および選択性を支配する因子の検討を行った。水素および水蒸気を還元剤に用いた場合いずれも、Pd/TiO2が概ね最も優れていた。触媒は10 mgの膜状にするのがよく、水素を還元剤に用いた場合CO2 0.12 MPa, H2 0.28 MPaの場合に極大速度でメタンを生成した。金属的なPdサイトへのCO2とHとの競合が考えられた。水蒸気を還元剤に用いた場合、メタン生成はCO2圧の0.39乗に比例して増加し、CO2 0.8 MPaでH2使用の極大速度と並んだ。水はTiO2表面で、CO2はPd表面でサイト分離されて、それぞれ酸化/還元されると考えられた。 一方、BiOClおよびAg-[Zn3Ga(OH)8]2CO3_mH2O層状複水酸化物を用いると、還元剤として水素を用いるよりも水蒸気を用いる方がメタンおよびCO生成速度が速い、という常識外の結果を得た。この理由として、半導体表面における水の活性化機構と深く関わっているものと考えられるが、詳細は研究進行中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
光燃料電池については、セルの要素毎に実験的に検討を進めて起電力、出力を向上させ、その動作原理を調べていく計画であり、概ね順調に進展していると考える。
一方、CO2光燃料化については、光触媒の還元電位として半導体によりマイナス側の電位をもつ添加物質およびサステイナブルな方法で負電位をかける、という計画であったが、本研究後の将来を見据えた研究開発では、半導体自身の選択、反応セルや還元剤、反応圧等根本的に検討する必要があった。上記のように2015年度にこれらを十分検討し、反応機構からの理解も進んでいる。反応サイトが競合しないよう、およびO2を脱離しやすい触媒開発等更なる進展の方向を明確にしている点でも、当初の計画以上に進展していると考える。
以上、総じて当初も計画以上に進展している、と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
光燃料電池については、上記の酸化チタン層より優れた触媒層の形成法(スプレー法,異方性結晶利用等)があるか検討する。負極だけでなく、正極についても層形成の影響を調べる。また、計画した検討項目として残されている、正極にp型半導体を用いたときの性能をサイクリック・ボルタンメトリーおよび分光測定と合わせて検討してゆく。
CO2光燃料化では、CO2とHとがサイト競合しないような金属表面サイト、たとえば合金サイトの開発、またH2Oから容易にO2が脱離する添加物の開発を行い、本研究のこれまでの成果で得た圧依存性、膜依存性、還元剤依存性と合わせて、更なる飛躍が十分期待できる。
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