2015 Fiscal Year Research-status Report
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26410216
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Research Institution | Nara National College of Technology |
Principal Investigator |
松浦 幸仁 奈良工業高等専門学校, 物質化学工学科, 准教授 (00416322)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | イオン液体 / ピラゾリウム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は電子ペーパーに用いることができる、有機物を主成分にする軽量でかつリサイクル可能なクロミック材料(電気化学的に変色する材料)の研究開発を行うために、ポリマー・イオン液体複合体の開発を行った。具体的には、ポリフェロセニルシラン(PFS)がイオン液体に溶解して形成された複合体をエレクトロクロミック材料として提案した。昨年度は、ピラゾリウム系イオン液体がPFS骨格のp型ドーピング効果を誘起してクロミック現象が起こることを見出した。本年度は、ピラゾリウムの2級アミンの水素原子の還元がPFSのフェロセンの酸化を誘起していることを確かめるために、様々な分光測定や熱分析を行った。また、ラマン分光分析や示差走査熱分析によりPFS骨格のp型ドーピング状態の観測も行った。これらの結果は、量子化学計算と合わせて国際学会で発表し、また、イオン液体の専門学会誌であるJournal of Molecular Liquidに論文投稿して掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度はPFSの合成に加えて、目標を達成するためにイオン液体の選定と複合体の作製に重点を置くことにしていた。本年度は、ピラゾリウムの2級アミンの水素原子の還元がPFSのフェロセンの酸化を誘起していることを確かめるために、様々な分光測定や熱分析を行った。その結果、赤外分光分析において2級アミンの水素原子が還元されていることを直接観測することに成功した。この結果と合わせて、ラマン分光分析により振動解析を行い、PFSの骨格の変化よりp型ドーピング状態が再確認された。また、示差走査熱分析によりp型ドーピング状態のPFS骨格がより直線的になり、ガラス転移点が消失することが明らかになった。以上の結果より、上記複合体の基本物性が明らかになり、電気化学セル等のデバイスの構築の展望が開けるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後もPFSの合成、イオン液体との複合体の改良と基礎的な物性測定を行っていく。さらに、実用化を目指して、本複合体を用いて電気化学セルを構築し、電圧印加時における可視スペクトルの変化を観測する。また、この電気化学セルの電圧印加における繰り返し特性や経時変化を観測し、劣化の原因を究明して、これをPFSの合成やイオン液体の選定にフィードバックする。以上の研究ループを繰り返し、最初に設定した電気化学セルのスペックが達成されれば、本材料の実用化を目指して電気デバイスの専門家と共同研究を行う予定である。
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Causes of Carryover |
本年度はPFS・イオン液体複合体の書物性の測定に重きを置いたために、薬品やガラス器具類などの消耗品の費用が少額で済んだことから次年度に繰り越すことになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度では繰越金を電気化学セル構築ための材料費や材料特性の解析のためのコンピュータソフトの購入に充てる予定である。
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