2015 Fiscal Year Research-status Report
結晶性ブロック共重合体が形成する共連結ナノ構造を利用した機能空間の構築
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26410228
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
池原 飛之 神奈川大学, 工学部, 教授 (90242015)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片岡 利介 神奈川大学, 工学部, 助教 (20514425)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 高分子 / 結晶化 / ラメラ構造 / ブロックコポリマー / 球晶 / プロトン伝導 / 原子間力顕微鏡 / 電子顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27度の研究では、syndiotactic polystyrene (sPS)を結晶化後、スルホン化することにより得られるプロトン交換膜において、高いプロトン伝導度を維持しつつ低メタノール透過性を実現する膜の作製条件を検討した。その結果、低温で結晶化させた膜を低い温度でスルホン化することでメタノールに対するプロトンの選択的透過性が向上した。電子顕微鏡(SEM)観察では、低温でスルホン化させた膜の欠陥が少なくなっており、これがメタノール透過抑制に寄与したと推測される。欠陥が減少した原因として、反応を抑えることで膜内部へのスルホン化剤の拡散が反応よりも優位となり、非晶部が同一物質の結晶部に比べ、より優先的に反応が進行したためと考えられる。 Polyamide (PA)とpoly(ε-caprolactone) (PCL)からなるブロックコポリマー(PA-b-PCL)を合成し、コポリマー中のPAを結晶化後にPCLをエッチングして得られる多孔質構造を原子間力顕微鏡(AFM)、SEMにて評価した。エッチング前の膜表面は比較的平滑であったが、エッチング後は30~50 nmの凹凸が現れた。また非晶性ブロックコポリマーのナノ相分離構造とは異なり、PA-b-PCLから得られた多孔質膜は、PA/PCL=9/1~5/5の広い組成比でラメラ積層状の構造を有した。コポリマーおけるPAのガラス転移温度がPCLの増加とともに減少することからPAとPCLの相溶性が高く、PAの結晶化によりラメラが形成されることでナノ構造が誘起されたと考えられる。AFMにより測定したエッチング後の表面のラメラ状構造の間隔は、エッチング前と比較して狭くなっていたことから、空孔ができたことにより膜が収縮した可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
結晶性高分子を用いたプロトン交換膜の研究において、膜の反応条件を見直すことでプロトンの選択的透過性が向上した。また膜の作製法とプロトン伝導度などの物性との関係が明らかになりつつあるため研究は概ね順調に進んでいると考えられる。PA-b-PCLから得られるナノポーラス構造には結晶のモルフォロジーが反映されていることが確認された。エッチング後の膜が当初想定よりは脆かったため、より強固な多孔質構造体が得られるかについても定量的な評価を加えながら結晶化やエッチング条件などを見直すことで改善していく。
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Strategy for Future Research Activity |
プロトン交換膜の結晶性や膜の微細構造をX線回折や示差走査熱量計、透過電子顕微鏡等を用いて更に詳細に調べ、プロトン伝導度、メタノール透過性との関係を明らかにし、考察する。sPS膜はその化学構造と高い融点から物性の熱安定性も期待でき、Nafion代替材料としてのポテンシャルは高い。膜物性の温度依存性を調べるとともに、表面修飾カーボンナノチューブ等の他の機能性材料を配合することで、更なる物性の向上を目指す。またプロトン交換膜に結晶性を有する場合、結晶化条件等により物性を制御できることが明らかになってきたことから、プロトン交換膜として有望な別の結晶性高分子を探索し、作製条件等を検討することでより優れた機能性膜材料を得ることを目指す。 多孔質材料の結晶化・エッチング条件とラメラ間隔の制御に焦点を当て、研究を遂行する。多孔質材料内部のラメラ間隔の測定には小角X線散乱も用い、結晶化温度の違いやエッチング前後におけるラメラ間隔の変化を調べる。材料の比表面積はガス吸着法により測定する。研究により得られる成果から多孔質構造の構築法や使用する高分子の種類を見直すことで、ラメラ積層構造を持つ更に安定なナノ構造体を得る方法についても検討していく予定である。
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Causes of Carryover |
前年度までに受領した研究費はそのほとんどを使用し、残額は少額であった。必要な薬品を購入するためには未使用額では不足したため次年度へ繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度の研究費と合わせて合成用の試薬を購入する予定である。
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Research Products
(9 results)