2015 Fiscal Year Research-status Report
高分子界面を利用した多成分ナノ多孔体の創製と分離機能
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26410230
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
佐光 貞樹 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 高分子材料ユニット分離機能材料グループ, 主任研究員 (80432350)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 相分離 / メソ多孔体 / ハイブリッド材料 / ナノ粒子 / 分離機能材料 / 高分子界面 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度はナノ多孔化法のメカニズムに関する理論的考察を中心に行なった。これまで、急速凍結によるガラス化状態から溶媒分子をナノ結晶化させることが重要と推測していたが、結晶化過程の基礎に基づき再考した結果、低温で結晶化させることが最も重要な要点であることが新たに明らかになった。結晶化は、核生成過程と結晶成長過程という2つの連続した異なる過程によって進行する。ナノスケールの結晶を作製するためには、結晶核を高密度に発生させることと結晶成長過程をゆっくりと進行させることの両方が必要である。結晶化理論によれば、いずれの要請も低温で結晶化させることにより実現することができる。一方で、物質状態の時間変化を記述する恒温変態曲線(TTT曲線)によれば、結晶化速度は融点以下でガラス転移温度以上の中間温度で最大化される。そのため、ガラス転移温度近傍の低温で結晶化させるためには、結晶化速度が最大となる中間温度を通り抜ける必要がある。そのために、急速冷却過程が必要になることが分かった。 また、ナノ結晶を得るためには、ナノスケールで結晶成長を停止させるためのピン止め機構が必要である。高分子溶液の相図を考えることで、このピン止め機構の動作原理を明らかにすることができた。高分子溶液中で結晶核が成長すると、高分子は溶媒結晶から選択的に排除されるために、結晶核近傍の高分子濃度はわずかに高くなる。さらに結晶核が成長していくと、高分子溶液中から溶媒分子のみが選択的に抽出される結晶が粗大化していくため結晶核周囲の高分子濃度がますます増加する。高分子溶液のガラス転移線に相当する濃度で結晶の周囲に高分子と溶媒分子からなるガラス状態の殻が形成されることで結晶成長がピン止めされることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、他に担当している業務を優先的に実施する必要に迫られたため、科研費の課題に関連した実験を実施する十分な時間を確保することが難しかった。そのため、研究課題に関する理論的な考察を優先して進め、多孔化メカニズムをより正しく記述できるようになった。今年度に実施が遅れている実験に関しては、来年度に集中して行なう予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
水浄化用途の吸着材としては、適度な親水性の高分子表面を形成することが望ましい。これまでのメソ多孔体は疎水性高分子を原料として作製していたため、親水性が低いことが課題の一つであった。親水化処理が可能なブロックコポリマーを添加した高分子混合系を用いてメソ多孔化を検討することで、親水性の高いメソ多孔体を作製する。 高分子メソ多孔体のもう一つの課題として、耐熱性の向上が挙げられる。ガラス転移温度近傍の高温になると、メソ細孔が消失する傾向が見られる。そこでナノ粒子などの無機フィラーを添加したハイブリッドメソ多孔体を作製することで、耐熱性の向上が可能かどうかの検討を行なう予定である。
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Causes of Carryover |
今年度は、研究課題のうちで実験に基づく実施項目の進捗が遅れていたため、未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度実施できなかった実験項目に関して、次年度に実験を集中して行なうことで、今年度未使用であった分の予算執行を進める予定である。
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Research Products
(7 results)