2015 Fiscal Year Research-status Report
ガラス内部のレーザー誘起元素移動を利用した空間選択的多孔質構造形成
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26410240
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
坂倉 政明 京都大学, 産官学連携本部, 准教授 (90402958)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下間 靖彦 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40378807)
三浦 清貴 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60418762)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ガラス / レーザー / 微細加工 / 空間光変調 / 組成分布 / 相分離 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、高繰り返しのフェムト秒レーザーパルス照射によるガラス内部での熱蓄積と低繰り返しのフェムト秒レーザーパルスの多点同時照射による温度と圧力の変調を利用することで、ガラス内部の融液の流動を引き起こし、ガラス内部の組成分布を局所的に制御する技術を確立する。さらに、組成分布の制御によりガラスの特定の領域のみで相分離や結晶化を引き起こすことで、ナノからマイクロメートルスケールの微細構造を局所的に形成することを目的とする。 当該年度で、行ったことは次の3つである。①均一組成のガラスおよび異種ガラス界面での組成分布変化の誘起と微細構造の形成、②特殊組成ガラスにおける高繰り返しレーザー誘起構造変化、③多点同時照射による亀裂形成の変化。①均一組成のボロシリケートガラスでレーザー照射と熱処理後に溶融領域中央で相分離が起こることが確認された。一方、異種ガラス(アルミノシリケートと無アルカリガラス)界面では、レーザー照射による溶融領域で互いの成分が混合することが観察されたが、元素の種類によって異なる分布になることが明らかになった。SiやNaは比較的均一な分布になったが、Ba, Ca, Znはレーザー照射中に生じる融液の流れに沿って分布することが明らかになった。後者の分布を利用してマイクロメートル程度の中空構造が作製できることが示唆された。②相分離に適したガラス組成の検討のために、容易に結晶化を起こす組成のガラスを浮遊炉で作製し、高繰り返しレーザー照射した。その結果、微結晶が数百ナノメートルの間隔で周期的に並ぶことが明らかになった。③多点同時レーザー照射によるガラスや結晶内部での亀裂形成過程を時間分解観察し、亀裂の周囲にあらかじめ生じている歪みによって亀裂の長さが変化することが明らかになった。このことは、空間選択的多孔質構造形成において亀裂を抑制するために重要な情報である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度までに構築した異なる繰り返し周波数のフェムト秒レーザーを多点同時照射するシステムを用いて、照射点分布やガラスの成分を調整することで、ガラス内部に様々な組成の空間分布を高い再現性で形成できるようになった。また、組成の異なるガラスの界面にレーザー照射をすることにより、特定の元素が数マイクロメートルの領域で高密度になることや、結晶化が起こしやすいガラスでの微結晶の数百ナノメートル間隔の配列など、ガラス内部に微細な中空構造を形成できる現象が数多く見出された。以上の理由より、おおむね研究が順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度までに、研究計画前に予想していなかった興味深い現象が見出された。ひとつは異種ガラスの界面にレーザー照射をすると、特定の元素がレーザー照射中の融液の流れに沿って分布することで、もうひとつが容易に結晶化を起こすガラスで微結晶が数百ナノメートル間隔で等間隔に配列ことである。前者の成果からガラスの組み合わせによって元素移動の自由度が高くなることが期待されるため、今後、均一組成のガラスだけでなく、いくつかの異なるガラスの界面で起こる組成分布変化について研究を行い、局所網目形成の自由度向上を目指す。後者については、微結晶が周期的に配列する条件について検討し、ガラス内部での局所ナノ構造形成の制御を実現する。
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Causes of Carryover |
研究を遂行する上で必要なガラス試料を購入することなく、京都大学の共同利用施設で作製できるようにしたところ、予定よりも物品費を抑えることができたために、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度に必要なガラス試料作製用の材料を購入するために使用する。
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