2015 Fiscal Year Research-status Report
酵素および無機層状半導体の集積による協奏的光機能の発現
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26410244
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
鎌田 海 長崎大学, 工学研究科, 准教授 (90315284)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 光触媒 / 酸化還元酵素反応 / 層状半導体 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までに合成した酸化還元酵素(ペルオキシダーゼ)と無機層状半導体から成る複合体を合成し、光照射による酵素活性の制御を検討した。 チタン(IV)テトライソプロポキシド、塩化鉄(II)の混合溶液の加水分解により無機層状半導体として鉄をドープした層状チタン酸を作製した。生成した鉄ドープ層状チタン酸は10 nm以下の極めて微小なナノ粒子として存在し、水溶液中で高い分散安定性を持つことが分かった。さらに、鉄のドープ量に応じて層状チタン酸のバンドギャップが長波長側にシフトし、可視光照射によりバンドギャップ励起を生じることが明らかとなった。 弱酸性溶液中で鉄ドープ層状チタン酸は負に帯電し、一方、ペルオキシダーゼは正に帯電しているため、両者は静電的に結合し複合体を得ることができた。この複合体に対してペルオキシダーゼの基質となるAmplex Ultraredの存在下で可視光照射を行い、酵素活性の可視光制御を試みた。結果的に、バンドギャップ励起が可能となるエネルギーを有する可視光(青色光:波長473 nm)の照射によりAmplex Ultraredの酵素的酸化反応が進行することが明らかとなった。鉄ドープ層状チタン酸を励起できない低エネルギーの可視光(緑色光:波長529 nm、赤色光:波長636 nm)照射あるいは鉄をドープしていない層状チタン酸への青色光照射では酵素反応は起こらなかったため、可視光照射による酵素反応の進行は鉄ドープ層状チタン酸の励起およびその価電子帯に生成した正孔により結合したペルオキシダーゼが酸化的に励起し、酵素反応を引き起こすことが証明された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の計画通り、可視光励起可能な無機層状半導体と酸化還元酵素を結合し、この複合体に可視光照射を行うことで酵素活性の可視光制御が可能であることを証明できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は可視光励起可能な半導体と発光生体分子を結合し、発光生体分子から発生する光エネルギーを励起源とした自己光源型光電気化学セルの構築を試みる。半導体として狭いバンドギャップを有する酸化鉄、発光生体分子として青色発光を示すカルシウム結合タンパク質であるイクオリンを用い、イクオリンの発光エネルギーを酸化鉄に吸収させ、光励起により生成した光キャリア(電子、正孔)を電気化学的あるいは化学的(光触媒的)に検知する。この試みにより外部光源を要しない新たな光電気化学反応系の創製につながると予想される。
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Research Products
(13 results)