2015 Fiscal Year Research-status Report
超音波のガイド波を用いた骨密度の非侵襲定量測定法の開発
Project/Area Number |
26420002
|
Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
齊藤 玄敏 弘前大学, 理工学研究科, 准教授 (70264091)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | ガイド波 / 縦波モード / たわみ波モード / アレイ信号処理 / 周波数センブランス法 / 最尤推定法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,解析モデルを円柱状多孔質弾性体モデルからそのゴム被覆モデルへと高度化し,実際の脛骨部へ近づけることを目標として研究を実施した。 (1)波動理論解析: 円柱状多孔質弾性体のゴム被覆モデルで,モデル長手方向に伝搬するガイド波について,1次のたわみ波モードと縦波モードの理論分散曲線を求めた。たわみ波モードの場合,低周波域の位相速度はゴムの速度パラメータからなる丸棒の理論分散曲線に近く,周波数が高くなるとともに乖離し,多孔質弾性体の理論分散曲線に漸近していくことがわかった。縦波モードの場合,低周波域の位相速度は多孔質弾性体とゴムの速度パラメータの中間的な値を示し,周波数が高くなると多孔質弾性体の理論分散曲線に漸近していくことがわかった。これらのことから,高周波域のガイド波を使うことで,多孔質弾性体の影響が強く表れた信号を測定できることがわかった。 (2) アレイ信号処理法の改良: 昨年のフィルタバンク法とセンブランス法を組み合わせた解析方法を周波数領域で表現したセンブランス法に改めた。また,問題点として挙げていた低周波域の精度が向上するよう,解析に用いるデータ長を検討した。データ長としては,解析対象とする周波数の1波長程度以上にデータ長を設定することでスペクトルが安定し,測定データ点(長手方向に展開するセンサの数)を増やすと空間分解能が高くなるなどの改善が見られた。 (3)ガイド波計測実験: 円柱状多孔質弾性体のゴム被覆試料を用いてガイド波の測定を行った。得られたガイド波データを(2)で述べたアレイ信号処理法で解析し,周波数-位相速度図を作成した。30~60kHzにおいて,ガイド波の位相速度は安定した値をとるが,それ以下の周波数域ではばらつきが大きくなる結果となった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,円柱状の多孔質弾性体をゴムで被覆したモデルでの理論解析,アレイ信号処理法の改良,ガイド波計測実験をほぼ計画通りに遂行できたことから,「概ね順調に進展している。」と判断する。 円柱状多孔質弾性体をゴムで被覆したモデルでの理論解析では,理論分散曲線を求める目標を概ね達成した。ただし,二層丸棒の特性方程式を解くときに,複素型の最急降下法を用いているため,初期値の設定によっては適切な解に収束しない場合がでてくる。 アレイ信号処理法(速度推定法)の改良では,主にセンブランス法の改良を行った。これまでのフィルタバンク法とセンブランス法を組合せた方法を改め,周波数領域で表現したセンブランス法にした。音波信号のアレイ解析から得られる位相速度の解の安定性や空間分解能を向上させるために,疑似波形解析を通じて,パラメータの設定方法の方向性を見いだすことができた。 ガイド波計測実験は,実験波形の速度解析の結果が30~60kHzの範囲限定で理論解析の結果と整合したことから,皮膚を介していても空隙率の変化に依存するガイド波の位相速度の変化を測定できることが確認できた。これは本研究を遂行していく上で,非常に大きな知見である。ただし,この周波数帯域のガイド波の位相速度だけでは,多孔質弾性体の速度推定や密度推定は難しいことが予想されるが,速度解析の結果に多孔質弾性体のP波速度が検出できているので,これを利用する方法を検討する。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)差分法によるシミュレーション:骨を多孔質線形弾性体,皮膚を弾性体とする人体の下腿部の数値モデルを用いて,ガイド波の伝搬を差分法によりシミュレーションする。ここでは,シミュレーションから得られた波形に対し,前年度構築した周波数センブランス法と最尤推定法を用いて解析を行うことで,速度分散特性の理論解析の正しさ,正確さを確認するとともに,理論解析の改善を行う。さらに,速度分散特性の理論解析では確認が難しいセンサ間隔,波源センサ間の距離を調べるために,これらをパラメータとしてシミュレーション波形を作成し,それらの解析を通じ実験方法の改善指針を得る。 (2)ガイド波計測実験:多孔質体の丸棒をゴムで被覆した試料を用いてガイド波の測定を行う。前年度は実験から得られた波形の速度解析結果が30~60kHzの範囲限定で理論解析の結果と整合していたが,(1)で得られる結果を実験に反映することで,理論解析の結果との整合範囲を高める。これにより,理論分散曲線と実測データのマッチングによる多孔質体の実体波速度と密度推定の精度を高める。また,前年度同様,実験ではP波速度も測れると予想されるので,これも利用するマッチング法を考える。 (3)全体のまとめ:下腿部の皮膚表面で得られるガイド波を利用した骨の実体波速度と骨密度推定について,これまでの研究をとりまとめ,特徴,適用範囲,問題点を明確にし,新しい方法論として提案する。
|
Research Products
(2 results)