2014 Fiscal Year Research-status Report
電磁波遮へい・吸収性を有する植物由来炭素粉体を配合したプラスチック複合材料の開発
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26420006
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
飯塚 博 山形大学, 理工学研究科, 教授 (90142215)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 植物由来素材 / 多孔質炭素 / 電磁波吸収材 / 誘電率 / 導電性 / 加圧成形 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、もみ殻,大豆皮,あるいは落花生内皮等の植物非食部を工業用資源ととらえ,工業的に有効利用する手法を検討することにある.とくに,これらを窒素雰囲気中で高温焼成して多孔質炭素粉体を作製し,得られた炭素粉体をプラスチック用の機能性添加物(フィラー)として用い, 電磁波遮へい・吸収性を有する複合材料の開発を目指している.本年度は,プラスチック複合材料製造に関して以下の研究を展開した. 協力企業や本学他研究室と連携し,混練機を使用してペレットの作製を行い,混練条件と製造されたペレット中での焼成粉体の分散状況や粉体の破砕状況を調べた.粉体の分散状況については,数値化して表示する工夫をし,これまで実施してきた抄紙法に基づく試料よりも分散状況が良好な試料が得られることを確認した. 製造したペレットを用いて,協力企業と連携して試験片形状の金型に流し込み,低圧の加圧成形を行った。その後,兵庫県立大学と連携して作製した試料の誘電率を測定した.また,電磁波吸収量を測定し,20dBを上回る数値を得ることができた.とくに,落花生内皮を焼成した試料では,配合割合が少ない状況でも高い導電性が得られたことから,粉体配合量を増やさずに所望の特性が得易く,射出成形に適することが期待された. 物性値である導電性や誘電率等への天然の多孔質性の影響について,黒鉛とそれを賦活処理した試料の特性比較から検討した.多孔質炭素とした効果としては,多孔質化に伴う重量低減が,電磁波吸収性の改善に寄与していることを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
製造方法については,実際に射出成形で成形する直前まで来たことから,達成度は計画通りに得られていると判断している.この段階まで来れた大きな要因としては,落花生内皮焼成粉体という炭素含有量の多い植物由来素材を発見できたことがある.その結果,これまで以上に少量の粉体配合量で吸収体を製造できる見込みが立ち,具体的な製造プロセスを検討できるようになった.今後は,射出成形のための型の作製について協力企業や大学と連携して計画していくことになる. また,植物由来炭素が電磁波吸収性に優れるメカニズムの解明については,球状の黒鉛とそれを賦活処理して多孔質構造にした黒鉛を比較して検討した.詳細はまだ解明できていないが,多孔質構造にすると軽量化でき,重量割合で配合するとより多数の粉体粒子がプラスチック中に配合されることが第一要因と考えている.そして,重量が変わらない以上に吸収量が高くなる点が確認できた.黒鉛に付したした多孔質構造は電磁波の波長と比べると十分に大きいことから,孔と電磁波が直接干渉しあうことは考えられないことから,多孔質構造に伴う乱反射等のメカニズムが考えられる. さらに,今後電磁波吸収体を設計していく行程で重要になる誘電率の測定について,山形大学内の教員との連携が進み,より簡便な手法で誘電率を測定できる可能性が増してきた.これらのことを総合すると,全体的な達成度も当初予定どおりの段階にあると評価できる.
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Strategy for Future Research Activity |
研究は順調に進展しており,研究計画に大きな変更は無い.また,粉体粒径の電磁波吸収性への影響なども検討しているが,植物由来の多孔質構造を残す程度の粉砕を施し,ペレットを作製して,射出成形にて電磁波測定用試料を作製することを進める.射出成形作業に関わる装置は本学のものづくりセンターに完備されている.また,使用する金型については協力企業と打合せを進めている. ① 射出成形の製造条件については,本学の伊藤浩志教授・高橋辰宏教授の助言を得て実施する.とくに,素材の流動性が課題となることから,加工時の温度管理と粉体配合量の組み合わせに着目して作業を実施する. ② 力学特性や電気的特性を補強するために,金属繊維や炭素繊維の挿入が必要になった際には,旭有機材工業と連携して検討する. ③ 電磁波遮へい性は広島県西部工業試験場,吸収性については兵庫県立大学と連携して評価する.
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Causes of Carryover |
当初計画していた植物由来素材の購入,炭化焼成作業経費,および複合材料作製用母材の購入に関して,協力企業からの支援で入手できたため,その経費が不要になった.それに伴い,経費削減ができた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
誘電率の測定法について,Sパラメータ法と呼ばれるこれまでよりも少体積の試料で測定可能な手法を現在検討している.これにより,電磁波吸収体設計の手順が短くなる.この際,新たに試料形状への打ち抜き金型と試料作製固定用のジグの自作が必要になる.今年度はこれらの経費に前年度経費を当てる予定である. その他,他機関で試験実施のための出張経費,謝金等が計画通りに必要となる.
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Research Products
(2 results)