2016 Fiscal Year Research-status Report
機能性不均質材料平板を伝播する応力振動の挙動解明と制御法開発
Project/Area Number |
26420015
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
芦田 文博 島根大学, 総合理工学研究科, 教授 (60149961)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 応力振動 / 傾斜機能性圧電材料 / 動的圧電弾性問題 / 薄板 / 理論解析 / 特性曲線解析 / 力学的インピーダンス / 逆圧電効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は,衝撃圧力が作用する圧電不均質材料平板の弾性波動伝播問題を,物性値が厚さ方向に指数関数状に変化する理想的な場合について,平板の両表面に電荷が作用しないときと,両表面間に電位差が印加されたときの2通りの電気的境界条件を想定し,理論解析を行った.併せて,得られた解析解の数値計算を行い,応力振動の挙動を調査した. その結果,平板の両表面に電荷が作用しないとき,応力振動の支配因子は力学的インピーダンスであることが明らかになった.力学的インピーダンスが一定な場合には周期的応力振動が生じ,力学的インピーダンスが変化する場合には危険な非周期的応力振動が生じた.従って,安全性の観点から,圧電不均質材料平板を力学的インピーダンスが一定になるように設計すればよいことが示された.なお,この結果は昨年度までに導かれた非圧電性不均質材料平板の結果と同様である. 一方,平板の両表面間に電位差が印加されたとき,力学的インピーダンスは支配因子とならず,一定な場合でも変化する場合でも危険な非周期的応力振動が生じた.ただし,理論解析によって導かれた応力の関数から,応力振動の項が消去される簡単な条件式が導かれた.この条件式を満たす印加電位差を平板の両表面間に印加すると,応力は恒等的に作用した衝撃圧力に等しくなり,平板内の応力状態は静的になることが明らかになった. 圧電不均質材料平板はある機能を持つように設計されるため,一般的に力学的インピーダンスは変化する.従って,危険な非周期的応力振動を完全に抑制する印加電位差が理論的に導かれたことは重要な成果と言える.なお,この印加電位差と作用した衝撃圧力の比は,圧電係数と誘電率の2つの物性値だけで表される. 上記の弾性波動伝播問題を特性曲線法を適用して数値解析を行ったところ,理論解析に基づく数値結果と同様の結果が得られ,理論解析結果を裏付けることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画に比べると,平成28年度中に,物性値の変化が現実的な場合の圧電不均質材料平板における弾性波動伝播問題の特性曲線解析を終えられなかったことから,研究の進捗状況はやや遅れていると判断した. 研究がやや遅れた理由は,圧電不均質材料平板における応力振動の挙動が,電荷が作用しない場合と電位差が印加された場合とで異なったので,理論解析の検証に時間を要したためである.さらに,電位差が印加された場合,理論解析によって導かれた応力の関数から応力振動の項が消去される条件式,つまり恒等的に静的応力状態に帰する条件式が導かれたことは望外の成果であり,その裏付けに時間が掛かったためである. 本研究計画に照らすと,応力振動を完全に抑制する印加電位差を与える条件式の導出は,応力振動の能動的制御という本研究の目的につながることから,進捗状況の遅れを上回る成果であると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
圧電不均質材料平板はある機能を持つように設計されるため,通常,衝撃圧力が平板に作用すると危険な非周期的応力振動が生じる.そこで,現実的な圧電不均質材料平板について,つまり物性値の変化が構成材料の体積分率で表される場合について,特性曲線法を適用して弾性波動伝播問題を数値解析し,応力振動の挙動を調査する.さらに,平成28年度に行った理想的な圧電不均質材料平板の理論解析結果から導かれた応力振動を完全に抑制する条件式が,現実的な圧電不均質材料平板の場合に適用できるか否かについて検証する. 次に,当初の研究計画に沿って,熱衝撃負荷が作用する圧電不均質材料平板の熱弾性波動伝播問題の理論解析を行う.つまり,物性値が厚さ方向に指数関数状に変化する理想的な場合について解析解を導出する.得られた理論解析結果から,熱応力振動の挙動を支配する因子を特定し,危険な非周期的熱応力振動が生じないように圧電不均質材料平板を設計する手法や,電界を印加することによって危険な非周期的熱応力振動を抑制する手法の開発について検討する.さらに,特性曲線法を適用して,現実的な圧電不均質材料平板の熱弾性波動伝播問題を数値解析し,解析解から導かれた熱応力振動の挙動や支配因子の妥当性について検証する.
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Causes of Carryover |
初め成果発表を予定していた国際会議(11th International Congress on Thermal Stresses, June 5-9, 2016, Salerno, Italy)に,所用のために参加できなかったことが主な要因である.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は,平成29年度に成果発表を計画している2つの国際会議に参加するための旅費と登録費に繰り込む予定である.
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