2014 Fiscal Year Research-status Report
高密度ナノ有機半導体薄膜創製における等方加圧の最適化と層界面密着強度の改善
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26420033
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Research Institution | Ibaraki National College of Technology |
Principal Investigator |
金成 守康 茨城工業高等専門学校, 電子制御工学科, 准教授 (70331981)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 有機半導体 / 空孔 / 等方加圧 / 密度 / 弾性率 / 硬さ / 曲げ強度 / ペンタセン |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、研究計画に従って、第一に、低分子有機半導体膜の包括的な等方加圧特性を調べた。第二に、高分子膜の加圧に先立ってコーティング試行を行った。 低分子膜では、加圧による高密度化効果がすでに確認されたメタルフリーフタロシアニン(H2Pc)に加えて、Alq3、亜鉛フタロシアニン(ZnPc)、ペンタセンを調べた。その結果、加圧による高密度化率は、膜結晶粒の形状、粒径、および配向に依存して~43%の範囲でばらついた。特に、キャリア移動度が高いペンタセンの膜厚減少は、その柱状結晶粒に依存して測定不可能なほど小さく、アズコートで十分高密度なことが分かった。低分子膜の力学的性質は、球/楕円体結晶粒であるH2Pc、Alq3、およびZnPcでは加圧によってヤング率が~2.3倍に上昇した。今回調べた低分子膜のヤング率と硬さは、アズコートでは大きなバラツキを示したが、等方加圧処理後に概ね同じ領域にシフトしたことから、加圧によってほぼ100%まで高密度化されることが分かった。これらの知見は、等方加圧処理が低分子膜の密度と力学的性質改善に高い効果があることを示している。また、本研究に触発されたMatsushimaら(Appl. Phys. Lett.,105,243301,2014)は、等方加圧処理したH2Pc膜の正孔移動度が2,000倍高くなることを示しており、本研究が有機デバイスの実用化研究進展に大きなインパクトを与えたといえる。低分子膜の研究成果は、学術雑誌に掲載されると共に、学会で口頭発表した。 高分子膜では、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)高分子膜をガラス基板上にスピンコーティング条件を適正化した。アセトン溶媒中に溶かしたPMMAをコーティングし、基板密着性が良く均一な膜を作製できることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の研究計画は、低分子膜の包括的な等方加圧特性を調べること、および、高分子膜の加圧に先立ってコーティング条件を適正化することだった。低分子膜は、有機エレクトロルミネッセンス(EL)の電子輸送層・発光層に用いられるAlq3、有機太陽電池のp型半導体層に用いられるZnPc、有機薄膜トランジスタに用いられるペンタセンについて加圧し、これらの膜の密度、力学的性質の変化を計画通り調べた。低分子膜の研究成果は、学術雑誌に掲載されると共に、学会で口頭発表した。また、高分子膜のコーティング実験では、主要な物品として、スピンコータとUVオゾンクリーナーを購入した。有機トランジスタのゲート絶縁層に用いられるPMMAについて、UVオゾンクリーナーを用いたガラス基板洗浄、コーティング溶液の調製、スピンコータを用いたコーティングにおける膜厚制御に関して試行を繰り返しながらノウハウを蓄積した結果、基板に良く密着したPMMA膜を作製することができた。 計画した課題を達成して研究が進展したことにより、低分子膜の包括的な加圧特性に関して得られた結論をより確定化する必要が生じた。このため、平成27年度以降も他の低分子膜の等方加圧特性を補足的に調べる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度以降は、研究計画に従って、高分子膜の作製とその等方加圧特性を調べる。また、低分子膜の加圧特性を補足的に調べる。低分子膜の加圧は、有機太陽電池のp型半導体層に用いられる銅フタロシアニン(CuPc)膜について、その密度と力学的性質が、加圧によって他の低分子膜(H2Pc、Alq3、ZnPc、およびペンタセン)と同様な挙動を示すことを確認する。低分子膜に関する包括的な研究成果を発表する。 高分子膜の作製とその等方加圧においては、第一に、すでにスピンコーティングのノウハウを蓄積したPMMAについて数マイクロメートルの厚膜を作製し、その等方加圧特性を調べる。加圧されたPMMA膜の密度、力学的性質の変化について低分子膜のそれらと比較して、高分子膜の加圧挙動を明らかにする。第2に、水溶性のポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT/PSS)について膜の作製と等方加圧特性を調べる。PEDOT/PSSは、有機ELや有機太陽電池の正孔注入層やコンデンサとして広く用いられる。アセトン有機溶媒を用いたPMMA溶液はスピンコーティング中にほぼ乾燥した。PEDOT/PSSは、水溶液とするために取扱いが容易である一方、コーティング後に長時間の自然乾燥をすると膜の性質に関する再現性が得にくいと推測される。このため、PEDOT/PSS膜は、加熱ヒーターを用いて乾燥の条件を一定期間試行した後、等方加圧特性を調べる。研究の進展により、他の高分子膜(例えば、ポリ(3-ヘキシルチオフェン-2,5-ジイル)(P3HT))についても等方加圧特性を調べる。 粘弾性・擬弾性特性を持つ高分子膜は、加圧の最大変位に対して約60%弾性回復する。膜の弾性回復によって常温において十分な改質効果が得られない場合には、ヒーター加熱によって膜を軟化させた後、加圧を試みる。
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Causes of Carryover |
有機色素材料・高分子材料(消耗品費)について、当初見積額よりも安価に購入することができた。また、当初予定していた論文投稿料(その他)が無料であった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に予定している高分子材料・ITOガラス基板(消耗品費)の数量を増やして購入する。当初計画では、予算の都合上、これらの購入金額を減額して申請した。
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Research Products
(2 results)