2014 Fiscal Year Research-status Report
レーザ誘起液中マイクロ衝撃波を用いた超精密・微細・複雑形状部品の微小表面改質加工
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26420040
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Research Institution | Kurume Institute of Technology |
Principal Investigator |
澁谷 秀雄 久留米工業大学, 工学部, 准教授 (80303709)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | レーザ / 熱誘起衝撃波 / マイクロ / ナノ / 微細 / 複雑 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,マイクロ・ナノオーダーの形状精度を有する超精密・微細・複雑形状部品は理化学機器や医療機器のみならず,デジタルカメラ,スマートフォン,自動車など,民生品の性能を左右する核になっている.今後,これら部品には更なる高機能化・高性能化が求められ,高精度化・微細化・複雑形状化だけでなく,表面品質・性状改善(鏡面・粗面,内部応力除去・付与,洗浄等)も要求される. しかしながら,機械研磨では工具の微小化が困難であり,微細・複雑形状の奥深くまで加工出来ない,エッチングでは全面均等加工あるいは局所選択加工が生じて形状精度が劣化する,ブラスト加工では噴射可能な粒子系が数十μmと大きく,局所加工にはマスクが必要である等といった問題がある. 上記問題を解決する方法として,本研究ではレーザ誘起液中マイクロ衝撃波を用いた微小表面改質加工を提案している.レーザ誘起マイクロ衝撃波の発生原理は以下の通りである.光ファイバの一方端に金属膜を成膜し,その金属膜部を液中に浸漬し,低強度のパルスレーザ光をその反対端から入射する.入射したレーザ光を吸収した金属膜が熱によって弾性膨張し,これによって液中で衝撃波が発生する. 本研究では,レーザ誘起液中マイクロ衝撃波を用いた微小表面改質加工装置を試作するとともに,試作装置による各種微細・複雑形状に対する微小表面品質・性状改善加工へ適応することを試みる. 本年度は,レーザ誘起マイクロ衝撃波発生装置および衝撃波によって水中に生じる圧力を測定する装置を試作し,それを用いて試作装置の衝撃波発生特性を調査した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
試作したレーザ誘起マイクロ衝撃波発生装置では,光ファイバの一方端に金属膜を成膜し,その金属膜部を液中に浸漬し,低強度のパルスレーザ光をその反対端から入射する.入射したレーザ光を吸収した金属膜が熱によって弾性膨張し,これによって液中で衝撃波が発生する. 本装置は大きく分けて,パルスレーザ発信器,金属膜を成膜した光ファイバ,光ファイバにレーザ光を入射する光学系,衝撃波の照射位置を制御するステージの4つに分かれており,本研究では光ファイバ端面の研磨加工と金属膜成膜および入射光学系を作製し,レーザ誘起マイクロ衝撃波発生装置を試作した. 光ファイバから照射される衝撃波の評価をする方法として,水中に浸漬した光ファイバ金属膜部下部に圧力センサを設置し,照射された衝撃波の圧力を測定する装置を作製した. 試作装置の光ファイバ金属膜より照射される衝撃波は使用する光ファイバの材質,端面形状,端面粗さ,成膜する金属膜の材質や膜厚,照射するレーザ光の波長,出力,発振周波数などに大きく影響すると考えられる.そこで,光ファイバはプラスチックとガラスの2種類,端面粗さは粗面・鏡面仕上げとし,金属膜の膜厚,照射するレーザ光の出力を変化させて,発生する衝撃波の圧力を評価した. これらの結果,水中に浸漬した光ファイバ金属膜部下部に設置した力センサから衝撃波に起因する信号を確認することはできなかった.この原因としては,光ファイバに入射するレーザのエネルギー不足が考えられる.試作したレーザ誘起マイクロ衝撃波発生装置では用いたレーザ発振器の内部トラブルにより,スペックどおりのレーザ出力を安定して得ることができていなかった.このため,圧力センサの検出限界以下の衝撃波しか出ていなかった,あるいは衝撃波が発生していなかったと考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
現時点では試作したレーザ誘起マイクロ衝撃波発生装置から衝撃波の発生が確認できていない.この対策として,早急に試作装置に用いたレーザ発信器を所定の出力が得られるものと交換するとともに,光ファイバの代わりに片端面に金属膜を真空蒸着した平面ガラスを水中に浸漬し,レンズで集光したエネルギー密度の高いレーザ光を入射できるよう装置を改造して下記の実験を行う. ●衝撃波発生装置の特性評価 金属薄膜を蒸着するガラス面の粗さを粗面・鏡面仕上げとし,金属膜の材質と膜厚,照射するレーザ光の出力を変化させて発生する衝撃波の圧力を測定し,衝撃波発生特性を明らかにする. ●衝撃波照射による加工特性 本研究で提案するレーザ誘起マイクロ衝撃波発生装置では,微細粒子が分散した溶液中でも衝撃波を照射することが可能である.衝撃波照射により溶液中の微細粒子を駆動することができれば,微細粒子の機械的あるいは機械化学的作用による研磨加工が可能である.そこで本研究ではナノダイヤモンドやナノシリカが分散した溶液に浸漬したシリコンに対してレーザ誘起マイクロ衝撃波を照射し,照射前後の形状や表面粗さ測定から加工特性を評価する.エッチングにおいて超音波を重畳させると,エッチングレートが大幅に増加することが知られている.本研究においてもレーザ誘起マイクロ衝撃波の照射によるエッチング加工が期待できる.そこで,アルカリ溶液中に浸漬したシリコンにレーザ誘起マイクロ衝撃波を照射し,照射前後の形状測定からその加工特性を評価する.超音波洗浄はキャビテーションによる衝撃波を利用して汚れを剥離させている.本研究においても,レーザ誘起マイクロ衝撃波の照射による洗浄効果が期待できる.そこで,切削油剤を塗布した試料にレーザ誘起マイクロ衝撃波を照射し,照射前後の水滴接触角から洗浄効果を評価する.
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Causes of Carryover |
所属機関の変更に伴い,申請時とは学内既設機器が異なり,研究の遂行に必要な購入備品・消耗品や機器使用料の変更があったため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初,学外の機器を使用する予定の内容を学内でできるようになったので,それに必要な消耗品・材料費に使用する予定である.
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