2015 Fiscal Year Research-status Report
切削による迅速試作を志向した機械加工インタフェイスの開発
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26420042
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
森重 功一 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (90303015)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 機械加工 / 工作機械 / インタフェイス / 力覚呈示装置 / CAM / CAD / 5軸制御加工 / 旋削 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、作業者が工作機械やCAMソフトウェア等のツールの複雑な操作を意識することなく、目的の機械加工を容易に実行できるように、作業者、工作機械、ソフトウェアの間を取り持つインタフェイス機能を開発することを目的としている。2年目となる平成27年度は、前年度までに開発した基盤技術をふまえ、5軸制御加工用CAMソフトウェアのための入力用インタフェイスや、高度な制御を必要としない旋盤による加工などを対象にしたインタフェイスの開発に注力し、より実用的な機械加工に対する力覚援用の可能性について検討した。 当初から研究の対象としていた5軸制御加工については、前年度までに開発したCAM ソフトウェアの入力インタフェイス機能の拡充に努めた結果、インペラなどの複雑な加工対象物に対しても、直感的かつ最小限の入力で適切な加工データを生成することが可能となった。従来のCAMソフトウェアを利用した場合と比較して、大幅に作業時間を短縮することが出来るため、作業設計の省力化に大きく寄与できると考えている。また、出力する切削力の精度向上にも取り組んでおり、切削力を算出するアルゴリズムの構築を終え、現在は力覚呈示装置に出力する力を計算する方法について検討している段階である。 一方、前年度から開始した旋盤加工用のインタフェイスについても、前年度までに開発された外形加工、内径加工、溝掘り、穴あけ等の基本的な加工を対象とした機能を拡張した結果、底部にオーバーハング部を持つ溝形状など、現行のCAMソフトウェアや、CNC旋盤に付属している対話式プログラミングシステムでは対応できないような複雑な旋削にも対応できるようになった。自作した工具による加工にも対応できるように、入力情報のフォーマット等の利用技術の開発についても検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度の経路補正や干渉回避等の基盤となる機能の開発を経て、本年度は具体的な応用に注力することが出来たため、完成度の高い成果をあげることに繋がり、学会等での発表内容も充実したものとなったが、いくつかの課題も明確になった。 5軸制御加工用CAMソフトウェアの入力用インタフェイスを対象とした研究については、実用に耐える加工データの生成が可能になるなど、システムとしての大枠は完成しているといえる。しかしながら、昨年度からも課題となっている処理速度および分解能に関する問題に対しては、その解決策などについて十分に検討することができなかった。これらの問題により、加工対象形状の大きさや加工精度などが制限されているのが現状であり、早急に対応するべき問題であると考えている。 また、旋削加工用インタフェイスについても、最終的に出力された加工データに大きな問題はなく、実機による加工実験によって有用性を示すことも出来ている。自作した特殊工具による複雑な形状の加工も可能になるなど、付加価値の高い旋削加工の可能性を示すことも出来た。しかしながら、使用する工具の形状や切れ刃部などの情報をシステムに入力するための作業に、かなりの時間を要している。準備時間の増加は、試作の省力化というシステム開発当初の目的に反するものであると認識しており、解決策について早急に検討する必要があると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初は、多軸・複合化が進んで主導で接操作することが難しくなった工作機械に対して、従来のハンドルやボタンなどに替わるインタフェイス機能を開発することを目的として研究を開始したが、平成27年度から推進方策を転換して、初年度で開発した基盤技術を、CAMソフトウェアの入力用インタフェイスや、旋削を対象にした機能などに転用した結果、明確な成果をアピールすることができるようになった。最終年度となる平成28年度は、システムの完成度を高めることを目的として、以下のような課題に取り組む予定である。 まず、5軸制御加工用CAM ソフトウェアの入力インタフェイスとして利用することについては、問題となっている精度を向上させるためにモデルの分解能を増加させることが不可欠であり、それに伴う計算負荷増大への対応も重要となる。利用している3次元モデルのデータ構造の最適化など、プログラム全体のアルゴリズムを見直すと同時に、GPGPUの技術を利用した並列処理の導入などについても検討していく予定である。 また、旋削用のインタフェイスについては、システムを使用する前の準備作業の省力化が大きな課題となっている。特に、工具形状の入力については、自作した工具の形状を3次元CADソフトウェアでモデル化しなければならないなど、作業設計の省力化という本来の目的からはかけ離れた負荷を要求する仕様となってしまっている。3次元スキャナを用いて取り込んだデータを利用した処理を実装するなど、実用性を重視した改良について検討する必要があると考えている。 引き続き、CAMソフトウェアにより加工データを作製している作業者に操作を体験していていただくなど、開発したシステムに対する意見を収集する機会を得るために、展示会などへ積極的に出展していく予定である。
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Causes of Carryover |
およそ30万円の次年度使用額が生じたが、これは発表に適した国際会議がなく、そのための旅費や参加登録費の執行がなかったためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
翌年度分として請求した助成金は、今年度開催される国際会議に参加するための費用として流用したい。
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