2015 Fiscal Year Research-status Report
ピーリング工具の実用化:径10μm以下の微細放電加工用電極の簡便な作製技術の確立
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26420043
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
田邉 里枝 長岡技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70432101)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 微細工具電極 / めっき / 被覆 / ピーリング / 瞬時除去 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、微細放電加工に用いる直径10μm以下の工具電極の簡便な作製技術を確立し、同一機上で微細軸形成から加工までの一連の作業を実現することを目的としている。取り扱いにくい細線電極をコアとして、その外周を把持しやすい径まで別の金属で被覆した同軸円筒状の工具を作製し、加工に用いる際に被覆層の一部を除去(ピール)してワイヤを露出させ、そのワイヤを微細加工電極として用いる工具を開発し、これをピーリング工具と名付けている。 これまでの研究により、直径100μm、50μm、30μm、20μmのタングステンワイヤをコアに用いて、電解めっきにより外径200μmとなるまで亜鉛を被覆することに成功した。工具精度の向上を期待して、従来のめっきで使われているいくつかのpH緩衝剤や平滑剤を添加し、めっき面への効果を調べたところ、デキストリンを添加するとワイヤ直径によらず偏心量は約2μm、表面粗さも約2μmが達成できた。 H27年度は、さらに細い直径10μmのタングステンワイヤを用いてピーリング工具の作製を試みた。外径が100μmとなるまで亜鉛を被覆したところ、工具精度は直径20μmのコアを用いて作製した場合と同程度であった。単発放電による被覆部除去は、コア径が小さいほど難しくなることが予想されたが、コアを未溶融で被覆部のみを除去する電気条件を見出した。単発放電によるコアの露出長さには限界があるため、被覆部除去と微細穴あけの同時加工を試みたところ、これらの同時加工は可能であり、板厚50μmのSK材に対して直径約20μmの貫通穴をあけることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究におけるめっきの重要点はワイヤ電極を把持しやすい太さまで均一に被覆すること、金属ワイヤよりも低い融点の金属で除去しやすいことであり、把持に必要な最低限の強度を有すれば、ち密である必要はない。これらは従来のめっきの目的から外れており、めっき条件の探索は困難と予想された。また、ピーリング工具を回転させて加工に用いる場合には、工具とワイヤの軸中心のずれがなく、工具表面(めっき面)が滑らかであることが重要である。工具精度は、偏心量(工具とワイヤの軸中心の差)と、めっき面の表面粗さ(Ra)を計測して評価した。添加剤としてpH緩衝材や平滑剤を選定してタングステンワイヤへのめっきを試みたところ、いくつかの添加剤で偏心量や表面粗さの改善が見受けられたが、特にデキストリンを添加した場合に大変改善した。直径100μmから10μmのワイヤへのめっきを試みたが、ワイヤ直径によらず偏心量が約2μm、表面粗さも約2μmが達成できた。単発放電による被覆部除去の試みでは、ワイヤ直径10μmの場合も被覆部の除去が可能でワイヤが未溶融で露出できた。ワイヤが細いほど入力エネルギーが大きすぎるとコアまで溶けてしまう。また、単発放電によって露出できるワイヤの長さには限界があるため、コアを露出させずに微細放電加工を行い、被覆部除去と微細穴あけの同時加工を試みた。コア径10μm、外径100μmのピーリング工具を用いて、板厚50μmのSK材に対して直径約20μmの貫通穴をあけることができた。10μmのワイヤを用いるピーリング工具の作製や被覆部除去と穴あけの同時加工は、2年目に予定していた内容であり、順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
ピーリング工具は、細線ワイヤへのめっきによる金属の被覆の後、その被覆部の一部を除去し、加工用電極として用いる構想である。これまでの研究において実施した最小径のワイヤは直径10μmのタングステンワイヤである。これを用いて、外径が100μmになるまでめっきによる亜鉛の被覆を行い、偏心量約2μm、表面粗さ約2μmの精度のよいピーリング工具が作製できた。また、単発放電によってワイヤ周囲の亜鉛を除去して軸中心のワイヤを未溶融の状態で露出させ、その工具を用いて炭素鋼の薄板への穴あけ加工を実施し、いずれの工程の作業も直径10μmのワイヤまでは成功している。今後は市販の最小径5μmから3μmのワイヤを用いたピーリング工具を作製し、現状の工具精度を維持できる程度のめっきが可能かどうかを検討する。また、被覆部除去と微細加工を同時に実現できる電気条件の探索をする。困難な場合は、レーザー照射による瞬時除去が可能かどうかの検討をする。 ワイヤ径が細いほどワイヤは切れやすく、めっきを実施する際には、治具へのワイヤの取り付けは張力をかけながら行う必要があり、10μm未満のワイヤの取扱いは難しく、治具の改良が必須である。
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Causes of Carryover |
ワイヤ径が細いほどワイヤは切れやすく、めっきを実施する際の治具へのワイヤの取り付けなど、その取扱いは難しくなるため、治具の改良が必須であることが予想されたが、10μmのワイヤまでは、その取り扱いが非常に難しいながらも、大幅な治具の改良をせずに、めっきを実施することができたた。また、参加することを予定していた学会と大学の用務が重なり学会に出席できなかったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
めっき試薬や冶具の改良、学会参加費等に用いる予定である。
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