2015 Fiscal Year Research-status Report
磁気援用加工法と電解還元水の複合による精密・清浄表面の創製法に関する研究
Project/Area Number |
26420046
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
川久保 英樹 信州大学, 学術研究院教育学系, 准教授 (90579129)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 磁気援用加工 / 電解還元水 / 仕上げ面性状 / 加工能率 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,磁気援用加工法の物理的除去作用と電解還元水の化学的作用とを複合させた精密・清浄表面の創製法を提案するものである.磁気援用加工法は,複雑形状部品の表面やパイプ内面の仕上げへ適用できる.また,仕上げ面には圧縮残留応力が発生し,表面改質の効果がある.電解還元水は,十分な洗浄性能を有し,環境負荷が少なく,低コストという利点があり,精密機器の表面洗浄へ適用できる.本年度は,H26年度の実験結果(除去能力,仕上げ面性状)に対して,詳細な検証実験と加工メカニズムの解明を行った.また,表面圧縮残留応力の発生メカニズムを考察した.本年度の成果をまとめると,次のとおりである. 1.除去能率と仕上げ面について:(1)従来法と比較して,除去能率に対する砥粒濃度の影響が小さい.この特性は,除去能率を管理する上で有用である.(2)砥粒濃度が0.1wt%のように低い条件において,従来法よりも除去能率が高くなる.(3)仕上げ面は,従来法よりも均一で細かい研磨条痕となる.また,砥粒濃度が0.1wt%のように低い条件においても,1.0wt%,5.0wt%と同程度の仕上げ面が得られた.(4)上記(1)(2)は,電解還元水スラリーが負のゼータ電位を有し,砥粒の分散性が従来法の金属加工液スラリーよりも高いことに起因している. 2.表面残留応力について:(1)従来法よりも圧縮方向に大きくなる.これは,砥粒による微小切削作用と,粒子ブラシによるバニシ作用の両者が混在したためである.このことは,表面粗さの向上と同時に,圧縮残留応力を付与する加工技術として応用が可能である.(2)粒子ブラシと電解還元水のみ(砥粒濃度0wt%)で加工した場合,加工面は粗面化し,比較的大きな圧縮残留応力が付与された.これは粒子ブラシによるバニシ作用に起因している.この技術は,粗面化と同時に,圧縮残留応力を付与する技術として応用が可能である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H26年度は,本研究が提案する電解還元水スラリーと磁気援用加工法との複合精密研磨法について,研磨能率や仕上げ面粗さに関する基本的特性を把握することができた.具体的には,(1)除去量,(2)表面粗さ,(3)表面観察によって,従来法(金属加工液スラリーを用いた場合)との比較を行った.以上の検討結果から,電解還元水スラリーはスラリー供給式磁気研磨への適用可能であることを検証した. H27年度は,H26年度の実験結果(除去能力,仕上げ面性状)に対して,詳細な検証実験と加工メカニズムを明らかにすることができた.更に,表面への圧縮残留応力発生のメカニズムを考察し,本加工法の工業的な有用性を明らかにすることができた.これらの研究成果は,学術論文としてまとめ,現在(H28年4月時点)査読中である.
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Strategy for Future Research Activity |
電解還元水スラリーと磁気援用加工法との複合精密研磨法の有効性を確認し,加工メカニズムを明らかにしてきた.更に,多様な被加工物への対応を可能とするため,今後は以下の内容について,従来法(金属加工液スラリーを用いた磁気援用加工法)との比較検討を行い,加工メカニズムを解明する. (1)各種試料(ステンレス鋼,炭素鋼,Al合金,Cu合金)に対する加工特性の解明 (2)マスキングによる露出面を選択的に表面改質する技術の開発 (3)加工後の表面の元素分析を行い,加工面の清浄度を評価
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Causes of Carryover |
当初計画で見込んだよりも安価に研究が進んだため,次年度使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H28年度に消耗品費と合わせて使用する.
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