2015 Fiscal Year Research-status Report
ナノマイクロ加工へ用いる時空間歪が補償された超短パルスビーム列の発生
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26420059
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
尼子 淳 東洋大学, 理工学部, 教授 (20644628)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中野 秀俊 東洋大学, 理工学部, 教授 (90393793)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 超短パルス / 回折光学素子 / 分散補償 / 自己相関計 / 非線形光学結晶 |
Outline of Annual Research Achievements |
・本研究では、回折ビームスプリッタと回折レンズから成る光学系(回折光学系)で超短パルスビームの分岐と集光を行う。しかし、超短パルスは波長スペクトル幅が広いため、回折分散に起因する縦横の色収差が生じてパルスは時空間において歪む。パルスの空間的歪が消える、即ち横色収差が消える、光学系の配置が存在することがこれまでの研究でわかっているが、パルスの時間波形については不明であった。 ・当該年度は、以下の課題に取り組んだ。 (1)回折光学系の特性評価:回折光学系の最適配置を決定するために、同光学系で発生させた回折ビームのパルス幅を計測した。実験には、中心波長780nm、パルス幅22fsのパルスを用いた。パルス幅の計測には第二高調波自己相関計を用い、パルス掃引幅を広げて十分な計測レンジを確保した。回折ビームをつくるために、1次回折角が異なる3種類の透過型ブレーズド格子を製作した。この計測から、回折ビームの空間的歪が消える配置の近傍でパルス幅も最小となること、パルス幅が最小となる配置は回折角に大きく依存しないこと、が明らかとなった。回折レンズの縦色収差のために最適配置におけるパルス幅は22fsよりも広がること、広がりの程度は同レンズの焦点距離に依存することもわかった。 (2)回折光学系の分散補償:実測されたパルス幅は解析モデルの予測値よりも広いことがわかった。この差は回折レンズの縦色収差に起因するスペクトル幅の狭帯域化によるものであり、伸張したパルスを回折光学系へ入れるだけでは縮めることができない。残存する縦色収差を補正するために、一対の高分散レンズから成るアフォーカル光学系を提案した。回折光学系の後ろへアフォーカル光学系を接続して縦色収差を補正し、屈折分散によるパルス幅の広がりは回折光学系へ入力するパルスを逆方向へ伸長させて補償する。回折レンズの仕様を考慮して、高分散レンズを設計、試作した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
・回折レンズの縦色収差によるスペクトル幅の狭帯域化の影響がパルスの伸長に及ぼす影響が予想以上に大きいことが判明し、当初考えていた分散補償の構想を一部変更した。前記の縦色収差を除くために、回折光学系の後ろへ2枚の高分散レンズから成るアフォーカル光学系を接続した分散補償法を新たに提案した。同光学系による収差補正の机上検討ならびに高分散レンズの設計と試作に、当初想定していなかった研究工数を計上した。 ・一方で、空間と時間の両方の視点から回折光学系の最適配置を決定できたことは実用的に意義がある。集光パルスのスポット形状が真円かつ最小となる配置とパルス幅が最小となる配置のずれが小さいので、集光パルスの空間強度分布を優先した場合でも、パルス幅はその最小値からほとんど広がらない。このことから、回折分散によるパルス幅の広がりをある程度許容すれば、回折光学系を超短パルスレーザー加工へ応用することが可能であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
・次年度(最終年度)は、以下の課題に取り組む。 (1)回折光学系の分散補償:回折光学系の後にアフォーカル光学系を接続し、所要量だけ伸張したパルスを回折光学系へ入力して、時空間において歪のない超短パルスビームアレイを発生させる。 (2)パルス幅推定の解析モデル:回折レンズの縦色収差によるスペクトル幅の狭帯域化を考慮した解析モデルを構築し、パルス幅の計測によりその有効性を検証する。
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Causes of Carryover |
・試作した高分散レンズ(2個)の価格が当該年度の支払い請求額と比べて小さかったために、次年度使用額として18816円が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
・次年度使用額18816円は、研究に用いる機器や材料を購入する費用の一部に充てたい。
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