2015 Fiscal Year Research-status Report
メカノケミカル砥粒砥石を用いた次世代研磨による高硬度基板材料の高能率超平滑加工
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26420065
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
山口 智実 関西大学, システム理工学部, 教授 (10268310)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古城 直道 関西大学, システム理工学部, 准教授 (80511716)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 超平滑化加工 / 超仕上げ / ダイヤモンド超砥粒砥石 / サファイア / 光学ガラス / メカノケミカル / 複合砥粒砥石 / シリコン |
Outline of Annual Research Achievements |
1.前年度までの研究により,サファイアの超平滑化加工において,#2000,#4000, #6000, #20000のダイヤモンド(SD)超砥粒砥石を用いた多段超仕上げ工程を行った結果,8分の超仕上げで粗さ2nmRa以下の超平滑面を達成することができた.しかし,詳細に加工面を観察すると,前工程で除去しきれていないスクラッチ痕が残留していることが明らかとなった.そこで,本年度は,各工程での超仕上げ条件と仕上げ量との関係を明らかにすることを目的とした.すなわち,仕上げ量に密接に関係してくるサファイアと砥石の真実接触圧力に注目し,この真実接触圧力を評価するため,まず弾性変形を考慮した砥石の作業面積率評価方法を開発した.その結果,(1)弾性変形を考慮した砥石の作業面積率評価方法を用いることで,砥石の表面形状から加工中の作業面を推定する,(2)砥粒切り込み量を測定することで,サファイアの接触面積と限界到達粗さを推定する,ことが可能となった. 2.前年度,ビッカース硬さ試験機を用いて付けたビッカース圧痕を除去量評価用のマークとする方法を見出しはしたものの,各種光学ガラス材に対するクラックの生じない圧痕マークを付けるための圧子の負荷ー除荷速度等の条件は特定していなかった.本年度は,石英ガラス,BK7,SK16,SF6の光学ガラスに対し,亀裂が生じず仕上げ時の仕上げ量を測定するための圧痕を付ける最適条件を明らかにした. 3.前年度までに得られた硫酸バリウム(BaSO4)砥粒砥石の超仕上げ性能の確認実験を行った際,前回と同様の仕上げ性能が得られなかった.そこで,その原因を色々と調べた結果,わずかなドレッシング条件の違いが超仕上げ性能の再現性に影響を与えることがわかり,MC砥粒砥石による超仕上げは,ドレッシングに対し鋭敏であることがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.砥石の構造は複雑なため,実際の加工性能と酷似したシミュレーション結果を導き出せるような砥石構造に関するシミュレーションモデルは,今までほとんどなかったと言ってよい.しかし,今回,微少な仕上げ量という条件は付くものの,実際のサファイアの前加工面と砥石表面の形状データを求めるだけで,ほぼ正確に仕上げ量を推定できるモデルの雛型を開発することができた.このモデルを基に開発を進めれば,計算機上にて超仕上げの多段工程の性能評価を実現することも考えられることから,予想以上の成果が得られたと考える. 2.前年度においては,ビッカース圧痕という除去量評価用マークを追加して行くというシンプルな方法を確立することで,ほぼ正確に除去量を測る方法を見出しはしたものの,各光学ガラス材に対する,クラックの生じない圧痕マークを付けるための圧子の負荷ー除荷速度等の条件は特定しておらず,本年度の地味な実験によるデータ集積で,ほぼどのガラス材においても,圧痕マークにクラックが発生することなしにSubsurface damageの深さを求めることができるようになった,という点で当初の目標をほぼ達成することができたと考える 3.シリコンに対するMC砥粒砥石の超仕上げにおいて,MC砥粒砥石が従来の硬質砥粒砥石に比べ,ドレッシングに対し鋭敏であることが再現性を確認する実験から明らかになった.この点に関しては,当初は軽視していたところであったが,実際の加工技術を確立する上では無視できない特性であるため,当初の予定を大きく変更した.
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Strategy for Future Research Activity |
1.今回開発したシミュレーションモデルの雛型は,まだ1種類の砥石でしか性能評価は行っていないので,少なくとも過去に多段工程で用いた全砥石に対してモデルを構築する.そして,多段工程のシミュレーションを可能にするには,仕上げ量だけでなく仕上げ後の加工面の形状データも必要となる.この点に関しては未だ手は付けていないので,この領域での開発も同時に進めていく. 2.石英ガラス,BK7,SK16,SF6の光学ガラスに対するSubsurface damageの深さの測定方法の確立にともない,各種ガラスに対してMC/MC複合砥粒砥石の超仕上げ実験を行い,特に,Subsurface damageの深さや大きさなどのスケールおよびその分布状態などについて明らかにしていく. 3.当初の研究計画を変更し,硫酸バリウム(BaSO4)砥粒砥石(複合も含む)よるシリコン基板の超仕上げにおいて,ドレッシングが超仕上げ性能の再現性に及ぼす影響について,加工実験を行うことで明らかにしていく.
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Causes of Carryover |
本年度は,サファイアの超仕上げでは,シミュレーションモデルの構築に時間を取られ,光学ガラスでは,ビッカース圧痕を付ける実験が主となり,当初計画していた回数の超仕上げ実験を行うには至らなかった.したがって,その分だけ工具の購入や補修にかかる費用について,予算段階での金額との差が生じ余剰金が発生した.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究で,主として用いる加工機である超仕上げ盤はすでにあり,加工面や砥石作業面を観察・測定するための粗さ計・SEM・AEセンサなどの基本的な測定装置もすでにある.したがって,余剰金を含めた次年度予算の用途としては,本年度予定より回数が増えると思われる超仕上げ実験に関わる費用,すなわち.ガラス,シリコン,サファイアなどの加工実験に使用する被削材や工具材の購入費,及び,各使用機器のメンテナンス費用を予定・計画している.
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