2014 Fiscal Year Research-status Report
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26420081
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
今戸 啓二 大分大学, 工学部, 教授 (80160050)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ワイヤロ-プ / 内部摩擦 / ねじり振子 |
Outline of Annual Research Achievements |
ワイヤロ-プの内部摩擦特性を調べるため,4リンク機構を応用した実験装置を試作し,2本の素線をより合わせた最も簡単なワイヤロープの張力と摩擦力の関係を調べた.その結果,素線間摩擦力fは,張力Tに比例すること,より合わせピッチを小さくすると,張力Tに対する摩擦力fは大きくなることが確認できた.摩擦力fの張力Tに対する勾配df/dTは,より合わせピッチの小さいほど大きくなることが分かった. つぎに,市販のワイヤロ-プの内部摩擦を評価するため,直径3mmのワイヤロ-プに重量85Nの鋼製円板で張力負荷を与える捩り振子式ワイヤロープ内部摩擦評価装置を試作した.その結果,減衰振動は僅かに非線形であることが分かった.そこで近似的に線形とみなし,静止位置を基準とした正負側それぞれの減衰振動波形に,線形微分方程式を適用し,ワイヤロ-プのねじりばね定数,粘性減衰率を算出した.その結果,試料としたワイヤロ-プにはねじりばね定数と粘性減衰率に異方性が認められた.同定した捩りばね定数,粘性減衰率より理論的減衰振幅を求め,実験値と比較した結果,良好に一致することを確認した. 自重式捩り振子ワイヤロープ内部摩擦評価装置では,大きな張力を与えられない.そこでねじを利用して張力を印加する捩り振子式ワイヤロープ内部摩擦評価装置を試作した.捩りばね定数の異方性を相殺するため,両端固定したワイヤロープの中央に捩り負荷を与える構造とした.直径5mmのワイヤロ-プに張力631Nを印加して行った実験より,振幅の大きい状態では振幅は等差級数的減衰,振幅が小さくなれば指数関数的減衰に移行することが分かった.そこで等差級数的減衰の部分を利用して,捩りばね定数と摩擦トルクを求めた.その結果,ばね定数と摩擦トルクは張力に比例して増加することを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
張力と内部摩擦の間には線形関係のあること,捩りばね定数と粘性減衰係数に捩り方向の異方性があることを定量的に確認することができたので,ほぼ順調に進んでいると判断した.また捩り振幅が大きい場合,捩り振動振幅は等差級数的に減少する.このことは摩擦係数が一定の境界潤滑状態であることを示している.しかしながら捩り振幅が小さくなれば,振動振幅は指数関数的に減少することが確認され,ワイヤ-ロ-プの内部摩擦は簡単な一つの法則では支配されないことが分かり,問題の複雑さを再確認することになった.
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Strategy for Future Research Activity |
振幅の大きさに従い,捩り振動の減衰状態が変化することが明らかになったので,その原因について理論的に考察する.はじめにワイヤロープに捩り変形を加えることを,螺旋のパラメ-タを変化させることでシミュレ-トする.数学的に得られた素線間の相対滑りの大きさでの摩擦係数の変化を調べる実験装置を試作し,相対滑りの大きさに伴う摩擦係数の変化を調べる.なお実験装置の試験片は,素線のほかに円筒あるいは球のように単純な形状でも行う予定である.相対滑りの減少に伴い,摩擦係数の増加することが予想されるが,予想通りとなれば,ワイヤロ-プの内部摩擦の複雑さの一端を解明できたことになり,定式化を進める上で大きな足掛かりを得ることになる. また最も単純な2つの素線を縒り合せたワイヤロ-プに張力を印加した場合の素線間に作用する法線力の大きさについても理論的に考察する.法線力と摩擦力が分かれば摩擦係数が計算できるので,昨年度行った実験結果では不明であった摩擦係数の変化を調べる予定である.
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Causes of Carryover |
平成26年度の物品費に残額が生じた理由は多チャンネルデジタルメモリ-の価格が計画より少し安くなったためである.また機械加工等を外注しないで殆ど学内で行ったことで,計画より15万円程度の残額が生じた.旅費に28万円の残額が生じた理由は,平成26年度にはエボラ出血熱による感染者が多発して,海外で開催される国際会議への出席を控えたためである.それに伴い学会への参加登録費でも約8万円の残額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
残額は海外での感染症の危険性の低下に伴い,次年度以降に有効利用する.残る2年間は,50万円以上の物品の購入は除き,できるだけ均等に予算を使用する計画である.
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