2014 Fiscal Year Research-status Report
作動油中の気泡の分離除去による油圧動力伝達システムの高強度化
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26420086
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
田中 豊 法政大学, デザイン工学部, 教授 (70179795)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 油圧 / 気泡 / キャビテーション / 流れの可視化 / CFD / 旋回流 / スパイラル係数 / 無次元気泡径 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,無動力の油中気泡分離除去技術を開発し,建設機械や自動車,重作業機械等に用いられる油圧による動力伝達システムを高強度化,長寿命化する.研究代表者らが提案する気泡分離除去装置には旋回流れが利用されている.この旋回流を生成する機構を最適化することで,油中気泡の分離除去技術を高性能化し,油圧駆動システムへの気泡混入による動力伝達ロスや騒音,作動油の劣化を低減する.また,気泡分離除去装置を中心としたシステム化により,油圧動力伝達システムの小形化,高圧・高性能化と,トータルメンテナンスコストの極小化を同時に実現する. 平成26年度は,透明アクリルで製作された気泡分離除去装置および作動油タンクを有する作動油循環システムを対象に,作動油中に分散した気泡が流入する気泡分離除去回路の流入側ラインと,わずかな作動油を含む分離除去された気泡が流出する放気側ラインや油タンク内の流れの様子,油流量や気泡量などを精密に測定する実験システムを構築し,気泡分離除去回路の性能を定量的に検討した.また気泡分離除去回路内流れの数値解析モデルの構築を行い,作動油や気泡の流れの詳細な数値解析を実施した. 測定実験と数値解析の結果を定量的に比較分析し,流れの無次元指標であるレイノルズ数の他に,新たに提案した無次元気泡径とスパイラル係数を装置の設計に導入することで,高い分離除去性能を有する気泡除去装置の基準形状の設計が可能であることを示した.さらにレイノルズ数と無次元気泡径を考慮して,この基準形状から装置の寸法を修正することで,流体の条件が異なる場合でも高い気泡除去性能が得られる装置を設計できることを示し,高性能な気泡除去装置の設計手順が具体的に示された. 研究成果の一部は,1編の査読付き印刷論文,2件の国際会議,4件の国内学会と2つの展示会において発表・報告された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,無動力の油中気泡分離除去技術を開発し,建設機械や自動車,重作業機械等に用いられる油圧による動力伝達システムを高強度化,長寿命化することである. 研究計画の前半では,気泡分離除去回路を用いて油圧駆動システムを模擬した回路による流れの可視化実験と条件を合わせた流れの数値解析をおこない,その両者を比較することで,数値解析の妥当性と有効性を検証し,様々な条件で計算した数値解析結果を基に気泡分離除去回路の設計手法を確立することであった. 初年度(平成26年度)は,流れの可視化と測定を行う実験装置を製作して測定実験を行うとともに,詳細な流れの数値解析を実施し,評価指標を基にした両者の結果の定量的な比較分析を行った.その結果,高性能な油中気泡の分離除去装置の設計手順を具体的に示すことができた.従って研究はおおむね順調に進展していると自己評価する.
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に確立した設計手法を用いて,次年度以降は高圧(45 MPa)の油圧駆動システムを模擬した負荷回路を対象にした高性能な油中気泡の分離除去装置の設計と試作を行い,様々な実験条件に対応した実験回路を構築する.また初年度に購入し動作を確認したコリオリ流量計を用いて,油中気泡量の精密な測定を行い,油中気泡の分離除去性能を評価する. また気泡分離除去回路を通す場合と通さない場合において,油圧駆動システムで発生するキャビテーション騒音や壊食現象の比較を行い,気泡分離除去回路による騒音や壊食の低減効果を実験的に明らかにする.また種々の条件によるキャビテーションが発生する条件下での流れの数値解析を行い,実験結果と比較検証する. さらに実機の運転パターンを想定して,作動油に空気を吹き込みながら連続運転し,気泡分離除去回路を通す場合と通さない場合において,一定時間ごとに採取した作動油の標本により,油の劣化度合いの違いを定量的に明らかにし,気泡分離除去装置の効果を検証する.また実験および数値解析で,その効果が明らかとなった気泡分離除去回路を実機の建設機械(中型油圧ショベル)に搭載し,フィールド実験を通して,その効果を検証する. 積極的な作動油中の気泡の分離除去技術の確立と実機への搭載のための設計手法の確立は,今後益々高まる油圧動力伝達システムの小形化・高圧化と省エネルギー化への要求を満足するためのシステムの高強度化(パワーアップ)と小形化・長寿命化に必要となる革新的な技術であることを明らかにする.
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Causes of Carryover |
本研究に関連した研究成果を発表する国際会議が2015年4月22日~4月24日に開催される予定で,すでに2015年1月に発表論文の投稿と参加申し込みを済ませている.また登録料等の関連費用の事前申込支払い期限が3月20日までであり,支払い手続きと執行が年度をまたいでの申請となるためである.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2015年4月22日の国際会議開催時に支払い執行する予定である.
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Research Products
(11 results)